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むかしのラフテーの作り方-ラフテーの由来(8) [ 沖縄と食]

前回紹介した古波蔵保好『沖縄料理物語』の「美味なるらふてえ」には、2種類のラフテーの作り方が書いてあります。1つは古波蔵氏の記憶にあるむかしのラフテー、そしてもう1つは妹の登美氏が1957年に開いた店「美栄」で創出した現在のラフテーです。それら2つのラフテーのポイントを書き出しましょう。

 

・古波蔵氏のむかしのラフテー
1.材料は沖縄黒豚のもも肉。
2.皮つき肉を角切りにして鍋に入れ、弱い火で煮る。
3.氷砂糖を入れてゆっくり煮て、醤油で味付けする。
4.できあがるまでに半日かかる。
5.脂の中に閉じこめられるので、腐りにくい。
6.食感は噛みごたえがあるていどの堅さがある。

・「美栄」のラフテー
7.皮付きの豚肉をかたまりのままで茹でる。
8.茹でた肉を1センチ半くらいの厚さに切り、厚手の鍋に、少量の「泡盛」、醤油、砂糖(または水飴)を入れて煮立ててから、肉を入れ、弱火で2、3時間煮込む。
9.食感は、皮も肉もやわらかい。
10.このラフテーが沖縄にひろまっている。

むかしのラフテーについては、「ラフテーの由来(6)」「ラフテーの由来(5)」で紹介しました。そこに書いたことと比較しましょう。

まず、そこではラフテーは保存食だということを紹介しました。古波蔵氏の説明では、ラフテーが脂の中に包み込まれているために保存性が良かった、ということです。料理が脂で密閉保存されていたわけです。実は、私は保存食であるということの意味が理由がよくわからなかったのですが、これでその意味がわかりました。

次に、作り方です。

まずは、煮方です。
「ラフテーの由来(6)」では、「泡盛と砂糖を入れて七輪にかけ、二、三日がかりでゆっくり炊く。醤油は仕上がりの前に入れる。・・・温めなおして一か月もつので、多めにつくっておく。」(『聞き書沖縄の食事』1988年、農山漁村文化協会)と紹介しました。ここでは泡盛を入れて2、3日かかりでつくる、とあります。
しかし古波蔵氏の説明はこれと異なっていて、半日でつくります。

「ラフテーの由来(6)」で『聞き書沖縄の食事』から紹介したことは、昭和の初期のことです。首里出身の古波蔵氏(1910~2001年)の記憶は、たぶん1920年前後でしょうから、大正末から昭和初年のころです。だから両者は、時期的に云ってそれほど大きな差はないと思います。

違いは地域、あるいは生活水準の違いかもしれません。『聞き書沖縄の食事』の料理法は、那覇の料理法です。那覇は商工の街として贅沢な生活がされていました。それに対して、古波蔵氏の出身の明治以後の首里は没落士族の街で、那覇に比べると質素で貧しい生活でした。そうした違いが反映されているのかもしれません。(古波蔵氏は首里の金城(かなぐしく)で生まれ、幼い頃に那覇近郊の安里(あさと)へ移った。)

その違いは、実は材料に現れています。
古波蔵氏は、皮付きもも肉で作ったとあります。古波蔵氏は「母が「らふてえ」をつくるのに使っていたのは、確かな記憶ではないが、豚のもも肉だったように思う。」と書いていますが、これは普通のラフテーの材料との違いを明言せずにさらりと書いています。

現在のラフテーは皮付き三枚肉を使うのに、なぜもも肉なのでしょうか。いや昔も上等のラフテーは三枚肉を使ったのです。なのにもも肉を使った理由は、きっと三枚肉ともも肉との値段の違いです。もも肉の方が安いのです。だから古波蔵氏の母はもも肉を使うことが多かったのでしょう。

この材料の違いが、作り方の違いにも影響するのではないでしょうか。脂の多い三枚肉の場合は2、3日かけて煮るけれども、脂の少ないもも肉の場合は半日でもよかったのではないでしょうか。

最後に泡盛です。古波蔵氏は、美栄では泡盛を使ったことを強調しているために、かつては泡盛を使わなかったように読み取れます。そうだったのかもしれません。
しかし泡盛自体は高価な酒ではありません。砂糖を溶かすためにも、たぶん泡盛を入れたと思います。


 
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