オキナワなんでも事典 [ 沖縄と食]
ナイチャーズ編『沖縄いろいろ事典』(1992年、新潮社)が発展して、池澤夏樹編『オキナワなんでも事典』(2003年、新潮文庫)になっているらしいということを紹介しました。
早速注文して、届いた本を読みました。
その巻末には「この文庫版『オキナワなんでも事典』はなかなか複雑な履歴を持っている。」という出だしで始まる「文庫版『オキナワなんでも事典』刊行までの長い経緯」という文章があります。その内容を簡単に紹介しましょう。
沖縄が今のようなブームになる前、沖縄の魅力を伝える事典形式の本をつくろうということになった。
事典といってもその各項目は、書き手の思いが籠もった署名のあるエッセイとする。
このアイデアのきっかけは、沖縄で異例のヒットを記録した『おきなわキーワードコラムブック』だった。
そして執筆陣はすべてナイチャーで『沖縄いろいろ事典』が1992年に刊行された。
この本はよく売れ、今も版を重ねている。
やがてその編者の1人である池澤が沖縄に移住した。
暮らしていると旅行者として訪れていた時とはまた別の発見がある。
事典にあるべくしてない項目が気になる。
その項目数は、元の項目数を上回った。
そこでCD-ROM形式の出版を企画した。
これだとインターネットサイトと連携させて、新しい項目を加えて更新ファイルを配布でき、増殖する事典が実現する。動画や音も入れられる。検索システムも作れる。
新しい編者が加わり、執筆陣はもっぱらウチナーンチュになった。
外の者にはどうしてもわからないほどの踏み込んだ知見を加えるためだ。
かくてCD-ROM版『オキナワなんでも事典』が1999年に刊行された。
この間に沖縄がブームになった。
安室奈美恵などのシンガー、映画「ナビィの恋」のヒット、そしてテレビで「ちゅらさん」。
CD-ROM版発刊時は439項目だったものが増え続け、588項目になった。
そしてその項目すべてが閲覧できるWEB版の提供が始まった。
その一方で本で読みたいという声が高くなった。
そして生まれたのがこの文庫版『オキナワなんでも事典』だ。
しかし項目数は減らし、写真は最小に、動画もない。
また今も刊行されている『沖縄いろいろ事典』との重複を避けた。
最後にこんなことも書いてあります。
沖縄に関する簡便で正確な知識が欲しいという要求からこうした展開があった。
しかし「このようにヤマトンチュの口に合うように細切れにされ調理された沖縄は本物ではない・・・。本当の沖縄はもっと図太く、したたかで、骨が硬いはずのものだ」と。
ところで『オキナワなんでも事典』に加わった新しい編者の1人、新城和博は、『沖縄いろいろ事典』をつくるきっかけになった『おきなわキーワードコラムブック』の編者、まぶい組の組長です。
そのおかげで、書店では買えなくなった『おきなわキーワードコラムブック』に載っていた内容が『オキナワなんでも事典』で読むことが出来る。この点でも、面白いです。
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