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「五段御取持」の角煮とラフテー -ラフテーの由来(12)- [ 沖縄と食]

琉球料理店「美栄」のサイトでは「五段御取持」が再現され、そこには「夢の五段料理を味わう」という古波蔵氏の文章があります。「客膳料理とラフテー-ラフテーの由来(10)」で紹介したことです。

その文章の原典が掲載された文芸春秋社『くりま』9号(昭和57年6月)を見ました。そこでいくつかのことがわかりました。

 

1.「美栄」のサイトにある内容は、古波蔵氏の文章だけでなく写真も『くりま』9号に載っていたものそのままを引用しています。これは第1の発見(確認)です。

2.写真に載っている料理は、當間信子氏の資料に基づき再現されたものです。また『くりま』では、写真の脇に料理の仕方が注記してあります。

3.古波蔵氏が文章で紹介するメニューは、料理の写真と一致しています。

ということは、古波蔵氏の文章は、彼がかつて「三献の料理」を食べたときのことを記憶に基づいて書いたものではなく、當間信子氏の資料によって「美栄」が再現した料理を解説したものだ、ということです。ただし単なる解説ではなく、その中に自分の記憶を織り交ぜたものだ、ということです。

ここまでは、すでに予想していたことだったのですが・・・。もう1つ、興味深いことを発見しました。

4.写真の料理を作ったのは、「美栄」の城間健氏です。城間氏は、当時は美栄の料理長だったはず。そして現在は、首里の「赤間風」の店主です。

さてそれで、懸案の問題です。かつて『くりま』9号に載って、現在は「美栄」のサイトにもある「五段御取持」のメニューにある不思議です。それは、本膳である二の膳には「角煮」、そして三の膳には「らふてえ」があることです。1つのコースに、角煮とラフテーが両方あることが不思議なのです。

古波蔵氏はその文章で、「「角煮」ならびにこれと同工異音の料理である「らふてえ」」と書いてあります。すなわち両者は同じ料理法だというわけです。これはどうも変だと思っていたんですが、実は、理由がありました。

というのも・・・。
『くりま』では、写真の脇に料理の仕方が注記してあります。これをみると、「角煮」は、「豚の三枚肉を塊のまま水煮し、柔らかくなったら、四、五cmの角に切る。醤油、泡盛、砂糖の煮汁をかけながら、箸で皮がちぎれるようになるまで煮る。上に茹でた地豆を飾る。」とあります(地豆とは落花生のことです)。そして「らふてえ」は、「豚の肩ロース肉と三枚肉を使う。作り方は角煮と同じ。」と書いてあります。まさに両者の料理法は同じだということなのです。
なぜかはわかりませんが、同じ料理法だ書かれている料理を解説したのですから、「同じ料理だ」と古波蔵氏は書かざるをえなかった、ということでしょう。

しかし、はて、さて。
角煮とラフテー。これらは本当に同じ料理なのでしょうか。そして同じ料理がコースの中に2回も出てくるものでしょうか。

私の結論を書きましょう。
「五段御取持」に同じ料理が出てくるのは、誤りでしょう。當間信子氏の資料によって「美栄」が再現した料理を古波蔵氏が解説したというのは、かなり権威のある内容なのですが、しかし残念ながら當間氏の資料(というかもしかしたら説明のしかた)に誤りや混同があったのでしょう。

他の「五段御取持」を、改めて紹介しましょう。「改めて」というのは、すでに「客膳料理か保存食か-ラフテーの由来(5)」で紹介したからです。

1つは、『くりま』掲載のものを実際に料理した城間氏が、自分の店「赤間風」で作っているものです。それが雑誌『カラカラ』13号(2004年8月)に載っていることもすでに紹介しました。
そこでは、二の膳に「角煮」はなく、三の膳に「ラフテー」があります。角煮とラフテーの両方を出さず、角煮を捨てて、沖縄らしいラフテーを残したようです。同じ料理が2回も出てくるのは、変ですから。

もう1つは、沖縄県のサイトの「五段のお取り持ち」に紹介されているものです。
ここでは、本膳である二の膳にも、そして酒のつまみを出す(料理に決まりはない)三の膳にも、角煮とラフテーがありません。しかし二の膳には「ンブシ豚」(煮染め豚)があります。

その二の膳の「ンブシ豚」はどういうものかというと。「7センチ角の三枚肉を煮染めたもの。皮に斜め十文字に切込みを入れ、赤く染めた落花生を1個飾る。」というものです。要するに醤油の煮染めです。

當間氏のメニューの「角煮」は、実はこの「ンブシ豚」のことだったのかもしれません。(當間氏が「ンブシ豚」を「角煮」と伝えたことで取り違えが生じた?)そうすると、角煮=ンブシ豚とラフテーとは異なった料理ということになります。

かつては客膳料理には、ンブシ豚が出されていた。その後、ラフテーが加わるようになり(両方が出ていたかもしれない)、今ではラフテーになっている。そういうことでしょうか。

とはいえ、「ンブシ豚」と「角煮」と「ラフテー」と、どう違うんでしょうか?いまひとつ、明確ではないですが・・・。(つづく)


 
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