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オショロコマ [ 北海道と食]

昨年の夏休みのこと。北海道の道東にある然別湖に行き、ホテルで「オショロコマ」を食べた。イワナの一種の魚です。
オショロコマという名前は、いかにもアイヌ語らしいけど、ではその意味は?
いつものことだけど、ネットでは、これまた珍説が幅をきかしている。

 

オショロコマはサケ科イワナ属の魚。北海道の道東を中心に、川の上流部にいる魚で、海に出ることはない。でも希に降海型がいるらしい。

然別湖の「オショロコマ」は北海道天然記念物に指定されている。
というのも・・・然別湖はカルデラ湖、だからここにいる「オショロコマ」は陸封型。それで他のオショロコマとは違っているわけ。で、ここのオショロコマは、「ミヤベイワナ」と言われる亜種とされている。珍しいんです。

ところで、なんでミヤベかというと、宮部金吾(北大名誉教授)が命名したからだそうです。この方、北海道大学では大変に偉い方です。(とうに故人だけど偉いんです。)
ところが最近はこれが亜種かどうか議論があるようです。その先は詳しくは知りません。

・・・と、ここまでは前振り。
本題のオショロコマの語源ですが。

この名前は 「アイヌ語のオソル・コ・オマ(特殊な岩魚)から来ています。」という説明がネットでは非常に多い。アイヌ語の「オソル・コ・オマ」を日本語に訳すと「特殊な岩魚」だというわけ。
「オソルコオマ」が「オソ(ショ)ロコマ」に転じたということです。(アイヌ語はソもショも同じです。)
でもこれは真っ赤なウソ説。

もしこれが本当なら、「オマ」は「岩魚・イワナ」という意味になるはず。それならば普通のイワナは「オマ」ということだから、「オマ」がつく魚がほかにあっても良さそう。だけどそんなものは聞いたことがない。
まともに考えれば、先の説明がウソだと気がつくはず。
そもそも「特殊なイワナ」なんていうのは変。そんな全くとらえどころのない名前をつけるわけがないです。

もう1つの語源説は、「オソルコマ、尻・それによって・泳ぐ」の意、というもの。
稗田一俊著・久保達郎監修『北海道の淡水魚』(北海道新聞社)に書かれているそうです。その本の現物は見ていないけど、この説は説明が少し本物っぽい?

しかし、「尻によって泳ぐ」って、どういう意味?尾びれで泳ぐ?
そりゃ、魚はみんなそうだ。それなら魚はみんなオソルコマってことになる。
どうも変です。

じゃあ、本当はどういう意味なんだろうか?

話を少しもどします。

1番目に紹介した「オソル・コ・オマ」は<osor-ko-oma>ですが。
その意味は、 <osor>は「尻」、 <ko>は「~に」「~によって」、 <oma>は「いる」で、「尻にいる」という意味になりそうです。意味がありげですが・・・。
しかしこの解釈は、文法的にダメなんです。<oma>は名詞を2つ使う動詞なのに、この例では名詞は<osor>1つしかない。だから文法的に成立しない言葉なんです。

「オショ(ソ)ロコマ」を「オソルコオマ」などとせず、素直に「オソル・コ・マ」<osor-ko-ma>と解するとどうでしょう。
<ma>は「泳ぐ」という意味で、「尻に向かって泳ぐ」という意味になる。2番目に紹介した説は、きっとこの解釈の仕方から出たのでしょう。
これは文法的にはいいんですが、でもこれはどういう意味でしょう。 逆進するってこと?

私の解釈ですが。
オショロコマの語源はきっと<osor-kon-oma>です。<osor> は「尻」、<kon> は「ホリ」のこと、<oma> は「いる・ある」という意味で、「尻がホリにある」です。ホリとは産卵する場所で、群れを作って産卵場所をつくることを「ホリを掘る」と言います。尻でホリを掘っていることを、そう呼んだのでしょう。
ホリを掘るのは、サケ科の魚の特徴ですから、オショロコマに限ったことではないのですが、まぁこれが語源ではと思います。

ところで、「オショロコマ」に似た地名に、北海道小樽市の「忍路(オショロ)」があって、これが何か関係がありそうに思えたりします。でもオショロは、<us or>「入り江」が語源であろうとされていて、オショロコマとは関係がなさそうです。(私のアイヌ語地名解


 
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