山里温泉は掛け流しと素朴な皿鉢料理で大満足 [温泉・旅館・民宿]
四万十町近くの温泉を探して見つけたのが、須崎市の『山里温泉』。
2007年7月にオープンした温泉旅館です。写真をいっぱい撮ったのに、写真はありません。理由はココ。
宿について、まず温泉に入ります。
その温泉がすばらしい。
宿泊棟を出て、敷地から河畔へと石段を降りていくと、男女別の露天風呂の棟があります。その浴舎は、実に簡素な造りで、浴槽は石を組んだもの。
その石造りの浴槽に、17.5度の冷鉱泉を加熱した湯が満たされている。湯がぬるい場合は、自分でコックをひねって、熱湯を加えます。
無色透明のお湯は、硫化水素泉で、硫黄の臭いがわずかにします。
浴舎の窓を開けると、間近に渓流がみえるロケーションで、せせらぎの音や鳥のさえずりを聞きながら温泉に入ることができます。
浴槽は5人が入れる程度の小型。手前の男湯には、石造りの浴槽の一部に、身体がちょうどはまりこむような、居心地の良いくぼみがあります。
洗い場は1つだけ。
排水は川に流すので、石けんしか使ってはいけなく、シャンプーを使う場合は宿に借りて使います。
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湯から上がると夕食です。
今日は我々3人だけの貸し切り。2階の客室から降りて、1階の部屋で食事です。
その部屋に入って、座卓に並んでいる料理に驚き。
座卓の手前に、鍋があります。
その奧には、大皿にカニ、エビ、貝つきのカキが人数分並べられています。
これだけで、おお!って思いますが、さらに・・・。
大皿に、刺身が大量にある。
カツオのたたきに、カツオの刺身、鯛、カンパチ、イカの刺身が並んでいます。とても3人前とは思えない量です。普通ならまぁ8人前程度の量です。
しかもその隣の大皿には、寿司が並べられています。これも6人前程度はあるでしょうか。
女将が鍋に火を入れて、若い女性とともに、まかないをしてくれます。
まずは、ビールを注いでもらって、乾杯!
箸をとろうとして、箸置きを見ると、不思議な箸置きがあります。
小さな壺の形をした焼き物の一部にくぼみがあって、そこに箸の先が乗っかっているのです。しかもその小さな壺には、花が生けてある。
「変わった箸置きですね。」と言うと、「私が焼いたんです」と女将が答えます。
女将はお花やお茶の先生で、焼き物も趣味でしている風雅な女性なのです。
早速、刺身を食べ始めます。
たたきには土佐酢、刺身用には冷やした醤油がついています。
ニンニクのスライスと共にたべるカツオは、やはりうまい。
しばらくすると、女将が鍋で煮た魚汁を配ってくれます。鯛のあら汁です。
少し落ち着いたところで、大皿のカニ、エビ、カキに目がいきます。
この頃、寒くなってやっとカキが食べられるようになりました、とのこと。
では、と殻をあけてカキを食べましょう。火が通ったカキも旨い。
このあたりで、日本酒を注文。地酒の土佐鶴だそうです。ぬる燗で2本お願いしました。
カニを改めてみて、「おぅ!」と思いました。
カニの手に藻のような毛が生えているのです。
「モクズガニですか?」と尋ねると「よくおわかりですね。」との返事。
博多生まれのEさんも知っていました。
モクズガニは、かの上海ガニの仲間なことは知っていますが、でも私は、実は初めて見るんです。食べるのももちろん初めて。
小型のカニの甲羅をあけ、ミソを崩したところに日本酒を注ぎ入れて、すすります。
あぁ、この香りは何でしょう。何かハーブのような香りがするんです。
これがモクズガニの香りなんでしょう。これまでのカニとは一線を画する高貴な香りがします。
3杯ほど甲羅で酒をすすってから、カニの身を食べました。とはいえ、小さなカニですから、食べるところはそんなにないんですけど。
女将と若い女性が引き下がるというので、さらに日本酒を2本注文。ややあって、女性がきて、女将からもと言って、4本の銚子を置いていきました。
それから、まだまだある刺身と寿司を3人で食べました。
もう満腹です。(笑)
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朝は、朝風呂に入れます。
渓流を眺めながらの早朝のすがすがしい風呂は格別です。
朝食は、ロビーでした。おかずはどれも手作りの野菜料理が4品と温泉玉子。
自家製の梅干しが美味しいです。
なんともヘルシーでスローな食事です。
食後のコーヒーはなかなか旨いです。
ついつい女将と話し込んでしまいました。
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女将の話では、ここは以前には「健康ランド・湯の谷温泉」があったのです
が、数年で廃業、その施設を須崎市職員だった女将の夫が買い取り、その後、まさに手作りで露天風呂を整備したそうです。自噴する冷泉があって、それを薪で
沸かし、中古の電気温水器をタンクとして使って、そのお湯と源泉の冷泉だけで、加水せずに浴槽を満たしているそうです。
女将は、高知市に住んでお花やお茶の先生をしたり焼き物を焼いたりしていた方ですが、いまではこの温泉宿で過ごすことがほとんどだそうです。
料理は、素人の女将が手ずからつくったもので、玄人の手が込んだ料理ではなく、素材そのままの素朴な料理です。でも皿鉢料理って、もともとそんな家庭料理のはずです。
この旅館には板前はいません。室内着も浴衣ではなくパジャマです。どちらも経費をかけないためでしょう。
観光化されない、素朴でゆったりした環境の中で、これまた素朴な料理を味わう。そんなスローな宿泊わう味わえるところです。
テレビ朝日「人生の楽園」で紹介されたのは、そんなところからでしょうか。
ここは日帰り入浴もできます。湯上がりには建物に戻って、冷たい飲物と菓子のサービスがいただけます。それで入浴料700
円ですから、これまた超リーズナブルでしょう。
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