めしばな刑事タチバナ:第7話 牛丼サミット(その1) [ めしばな刑事タチバナ]
「めしばな刑事タチバナ」の第7話は「牛丼サミット」。
脚本:田口佳宏、監督:桑島憲司です。
以下のことを紹介しましょう。
◆「めしばな」のネタ
◆タチバナの熱い語り
◆立花流レシピ
◆タチバナの主張
今回はネタと熱い語りまで。
◆「めしばな」のネタ
今回登場する店とメニュー、原作での登場を表にします。
店名 | メニュー | 原作 |
牛の力 | 牛力丼(白) | 第3ばな |
アッシュドゥ | (閉店して「牛の力」へ変更) | 第3ばな |
吉野家 | 牛丼並盛 | 第2ばな |
Beef Bowl | - | |
すき家 | 牛丼(並)、3種のチーズ牛丼 | 第2ばな |
牛丼(メガ)、 おろしポン酢牛丼、 ねぎ玉牛丼、高菜明太マヨ牛丼、カレー南蛮牛丼 | - | |
松屋 | 牛めし(並) | 第2ばな |
牛焼肉定食、カルビ焼肉定食 | 第21ばな | |
デミたまハンバーグ定食、 ネギ塩チキングリル定食、 マーボ豆腐定食、 豚と茄子の辛味噌炒め定食、 トンテキ定食、 チキントマトガーリック定食、 うまトマハンバーグ定食、 豆腐キムチチゲセット オリジナルスパイシーカレー | - | |
フレッシュトマトカレー | 第46ばな | |
どん亭 | どん亭スペシャル | 第3ばな |
たつや | 牛どん(大)、かつ牛どん | 第25ばな |
どんぶり太郎 | 牛丼(並)、おろしゆずぽんず牛丼、キムチ牛丼 | 第90ばな |
牛めし げんき | (閉店) | 第3ばな |
浅草今半 | 百年牛丼 | 第22ばな |
神戸らんぷ亭 | 醤油牛丼、塩牛丼 | 第25ばな |
東京チカラめし | 焼き牛丼、ガーリックねぎ牛丼 | 第47ばな |
ご覧のように、ドラマで登場するお店はすべて原作にも登場しています。
原作は、第2、3ばな「牛丼サミット その1、2」と第21~25ばな「牛丼サミット再び その1~5」がメインです。
さらに第46ば「トマトカレー」、第47ばな「焼き牛丼」、第90ばな「やっこ定食」が加えられています。
そして原作での牛丼ネタは、松屋の「フレッシュトマトカレー」以外、第2ばなで初めて登場するチンピラの児玉との間で交わされるめしばなです。
◇「牛の力」がオープニングに
原作にない、という意味での例外は「牛の力」です。
第2ばなで「消えた牛丼の話し」として「アッシュドゥ」が登場します。
そのときに「牛の力」も出るには出るのですが・・・
BSEの頃に最後の上野店が閉店した。・・・上野の同じ場所に高級牛丼路線の新店舗ができてる。かつての路線とは違うが、ここも一食の価値ありだぜ。
ということで、店名が出て来ないのです。
しかしその「牛の力」が、ドラマのオープニングに登場しています。
なぜこの店がオープニングに登場するのか?
独特の牛丼スタイルだから、ということではないでしょう。
今回のドラマに登場するお店の中で、ここだけがドラマオリジナルだから、じゃないかって思いますよ。
◆タチバナの熱い語り
◇タチバナ「牛丼絵巻」を語る
さて、タチバナが牛丼のめしばなが展開します。
「ビッグ3」を語らずして「牛丼絵巻」は完成しません。
牛丼界のパイオニア「吉野家」。
牛丼屋のスタイルを変えた「すき家」。
豊富なメニューでスタンド定食の独自イメージを確立した「松屋」。
「牛丼絵巻」て言ってますけど、原作では「牛丼三国志」と言っています。
まずは吉野家から・・・。
それまで高級なイメージだった牛肉を大衆食に定着させたのは、まぎれもなく「吉野家」の功績です。
最初に牛丼のテレビCMを流したのも、Beef Boulと銘打って牛丼をアメリカに進出させたのも「吉野家」です。
ビッグ3のうち、最大の吉野家はアッサリしています。
ただし吉野家の話しは、タチバナが被疑者の部屋に入ったところから始まって居るんです。
そこでタチバナは写真を見つけます。
その写真を見てタチバナが唸る。
吉野家築地一号店、ここから牛丼の歴史が始まるんだ。
手に取ったのは、偶然に写り込んだ吉野家一号店の写真です。
ここが伏線になっているんです。
◇タチバナ「すき屋」を語る
すき屋について、じっくり語ります。
お次は「すき屋」だ。
「すき屋」大躍進の要因は3つ。
1つめは、カウンター席だけだはなくテーブル席を導入し、女性をはじめ家族客、グループ客が入りやすい雰囲気をつくったこと。
そして2つめは、豊富なサイズ設定。
(中略)
女性や若者に支持を得たのがすき屋の特徴だ。
そしてその原動力とも言えるのが、大躍進、3つめの要因。
チーズ、おろしポン酢、わさび山かけなど様々なトッピングで牛丼の新境地を切り開いて行った。
そして驚異の大ヒット作・・・ねぎ玉牛丼。
シャキシャキの青ネギにピリッと辛いコチジャンだれと卵の黄身が混ざり合う絶妙な辛さのバランスをかもし出している。
ちなみに黄身と白身を分けるアレは「エッグセパレーター」。
で、残った白身を俺はみそ汁や豚汁に入れて食べる。
それまでオヤジの食べ物というイメージだった牛丼が、すき屋のトッピング牛丼の登場によって、ガラリと変わった。
俺はこれを「牛丼の文明開化」と呼んでいる。
(中略)
すき屋のトッピングはどこまでも広がっていく・・ビッグバンのようなものだ。
なかなかの語りです。
しかしこの展開は原作ではかなり違っています。
当時の牛丼ってのは今と違って”野郎”系の食い物でな・・・その中でも金欠のミドル世代や予備校生がメインで、お前さん(五島)みたいなシュッとした奴なんか決して近づけない限定空間だった。
ところがここにきて、そんな”空気”が一変する。バブルの崩壊だ。
景気が落ち込み、24時間400円で満足できる”牛丼”の存在価値が一気にハネ上がって・・・牛丼はすべての男たちにとっての”慈愛”になった。
流れに輪をかけたのが、その数年後の「つゆだくブーム」。当時大人気の若い娘さんがテレビ番組で発言して女性客やファミリー層が目覚めた。
・・・そこを馬蹄式カウンターじゃないテーブル席で一気に取り込んだのが、お前さん(児玉)ひいきの「すき家」ってわけだ。
松屋が牛丼屋を”牛丼以外”に広げ・・・さらにすき家が”トッピング”や”座席”で客層を拡大して、牛丼はついに国民食に進化したのだ。
ドラマでは、メニューと店内の仕立てで解説している。
しかし原作では、バブル崩壊と「つゆだくブーム」という世の中や客側の変化にも言及しています。
ちなみに「当時大人気の若い娘さん」とは華原朋美さんのことです。
◇タチバナ「松屋」を語る
そして松屋です。
松屋の定食、不動のツートップと言えば「カルビ焼肉定食」に「デミたまハンバーグ定食」。
(中略)
牛丼よりも定食を頼んだときに俺は、松屋のみそ汁無料のありがたさを再確認させられる。
不動のツートップを軸に、松屋は常に新しいメニューを世に送り出している。
ときにはマーボなす定食や豆腐キムチチゲセットなど、牛丼屋の枠に囚われない斬新なメニューがあったりします。
(中略)
そして今や夏の定番、フレッシュトマトカレー。
もう松屋が10年以上前から、研究と試行錯誤を続けているマニアックスパイシー路線のひとつの頂点です。
(村中)牛丼でなくなってませんか。
いいんだよ、俺たちは牛丼じゃなくって、牛丼屋の話しをしているんだよ。
ピッチャーだけじゃ野球が出来ないように、牛丼以外も大切なんだ。
フレッシュトマトカレーは、夏限定のメニュー。
今年もまたやってくれます。
「牛丼の話しではなく、牛丼屋の話しをしている」。
これはなかなかの名言です。
「メニュー」の1つ1つに心が奪われつつも、しかしその料理を提供する「お店」そのものへの愛情。これがめしばなのソウルと思います。
◇タチバナはどこが好き?
これらビッグ3の中で、タチバナが好きなのはどれか?
原作では、こんなことを語っています。
さっきまで吉野家の代表のように振る舞ったが、実はな・・・。
本当は・・・もうずっと松屋のほうに入れあげてるんだ。
古女房の吉野家はもう30年以上も世話になった糟糠の妻だ。
でもここ10年ほどは、愛人宅に顔を出すことがめっきり増えてな。
そういうとき男ってのは罪悪感を背負うもんだろ?
しかも最近、もう一人若い女が急成長して、ちらちら視界に入りやがる。
これがまた悩ましい。
「もう1人の若い娘」はすき屋のことです。
いまや、すき屋が売上げナンバー1になってしまった。
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