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プレスハムとチョップドハム [食文化]

昨日の記事でホテルの朝食に「チョップドハム」というのが出ました。
プレスハムっていうのは昔から知っているけど、チョップドハムという名は初めて聞きました。

これが朝食に出たチョップドハムです。
改めてよく見ると、実はよく見かけるハムですなぁ。

チョップドハムって何なのかをググってみたら、あいまいな情報が多くてビックリ。
「JAS規格に適合せず、肉塊の大きさが小さく、つなぎの割合が多いプレスハムに類似した製品」なんていう説明なんです。
チョップドハムってそんなにいいかげんなものなのかしら。

さらにググると、今ではいちおう基準があることがわかりました。
そこを記事にして、ハッキリさせることにしましょう。

プレスハムとチョップドハムについて、ググってみました。

◆wikipedia

まずwikipediaには、プレスハムについての説明があります。

日本の食肉加工品である。小片の畜肉を固めて作られる比較的安価な食肉加工品で、日本では1970年代以前の一時期、一般にハムといえばこれを指した。品質表示基準では「プレスハム類」として、「ハム類」とは区別される。

農林水産省の定義に基けば、つなぎを使用する場合は20%以下、肉塊には豚肉・牛肉・馬肉・めん羊肉または山羊肉の10グラム以上の塊を使うものとなっている。つなぎには畜肉のほかニワトリなどの家禽やウサギ肉を挽肉にしたものにデンプン・小麦粉・コーンミール・植物性や卵・牛乳・血液より得られた蛋白質などを加えたものなどが利用されている。日本農林規格(JAS)では、原料中の豚肉の含有率などによってプレスハムの等級をつけている。

品質表示基準農林水産省の定義日本農林規格(JAS)の3つが出てくるんですけど、どう関係しているのか不明。
ずいぶんといいかげんな記述です。
まずは、プレスハムとは何かからはっきりさせないといけないようです。
しかも後で説明するように、このwikipediaの説明は間違っているんです。(〃´o`)=3

ともあれwikipediaには、こうしてプレスハムについての説明はありますが、しかしチョップドハムについての記述は一切ありません。

 

◆播州ハムの情報

チョップドハムについて、播州ハムHPの「ハム・ソーセージなんでも相談室」には、こうあります。
http://www.ham.co.jp/un4-b.htm

Q) チョップドハムとはどんなハムですか?(木曽様ほか)
A)
・昭和20年代に、畜肉(当時はマトンや馬肉)をつなぎでくっつけたハムとソーセージの中間的な製品・プレスハムが誕生しました。(日本のプレスハムは欧米のPressed hamとは別の我が国独特の製品です)
・その後、プレスハムの規格より肉塊が小さく、つなぎの割合が多い商品がでて来るようになり、これをチョップドハムと称するようになりました。(欧米にもチョップドハムという名前のハムがありますが日本のものとは別のものです)

プレスハムには「規格」があるが、それより肉塊が小さくてつなぎの割合が多いものをチョップドハムと称するとのこと。
チョップドハムには規格がないみたいに書いてあります。
ネット上ではこれが元ネタになって、プレスハムの規格外品がチョップドハムだとする情報がネットに多くあるわけです。


では、いよいよ本題です。
1.プレスハムの規格はなにか?
2.チョップドハムには本当に規格がないのか?

結論を先にいいましょう。
1.プレスハムの規格は日本農林規格(JAS)にある。
2.チョップドハムにはJASの規格・基準はないが、今では別の規格がある。

プレスハムの方から示しましょう。
まず規格の根拠から。

◆日本農林規格(JAS)
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/kikaku_itiran.html

「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)にもとづいて、いくつかの食品に規格が定められ、その規格に合格しているとJASマークがつきます。


JASマーク


特定JASマーク


有機JASマーク

 

このJAS法は1950年に制定されたもので、「当時は、戦後の混乱による物資不足や模造食品の横行による健康被害等が頻発しており、農林物資の品質改善や取引の公正化を目的としてJAS規格制度がまず発足しました。」と説明されています。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_gaiyou.html

ハム・ベーコン関係では以下の規格があります。
一般JAS規格
ベーコン類(ベーコン、ロースベーコン、シヨルダーベーコン)、ハム類(骨付きハム、ボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ラックスハム)、プレスハム、ソーセージ
特定JAS規格
熟成ベーコン類(熟成ベーコン、熟成ロースベーコン及び熟成ショルダーベーコン)、熟成ハム類(熟成ボンレスハム、熟成ロースハム及び熟成ショルダーハム)、熟成ソーセージ類

◆品質表示基準
http://www.caa.go.jp/jas/hyoji/kijun_Itiran.html

JAS規格は特定の品目について個別に品質表示基準を定めていたのですが、2000年の改正で生鮮食品と加工食品のすべてに「品質表示基準」に従った「食品表示」を義務づけました。

ハム・ベーコン関係では先の、JAS規格品目に加えて、混合プレスハム、混合ソーセージ、魚肉ハム、魚肉ソーセージの表示基準があります。
プレスハムの規格はJAS規格と同じです。

さてそこで、プレスハムの規格の内容です。

◆プレスハム

プレスハムにはJAS規格があります。(最終改正平成21年7月13日)
http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000996.html
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_10_090713.pdf
(内容は同じです)

「定義」には、こうあります。

プレスハム:次に掲げるものをいう。
1 肉塊を塩漬したもの又はこれにつなぎを加えたもの(つなぎの占める割合が20%を超えるものを除く。)に調味料及び香辛料で調味し、結着補強剤、酸化防止剤、保存料等を加え、又は加えないで混合し、ケーシングに充てんした後、くん煙し、及び湯煮し、若しくは蒸煮したもの又はくん煙しないで、湯煮し、若しくは蒸煮したもの
2 1をブロック、スライス又はその他の形状に切断したもの

肉塊
畜肉(豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉又は山羊肉)又は家きん肉を切断したもので、10g以上のものをいう。

つなぎ
畜肉、家兎(と)肉若しくは家きん肉をひき肉したもの又はこれらにでん粉、小麦粉、コーンミール、植物性たん白、卵たん白、乳たん白、血液たん白等を加えたものを練り合わせたものをいう。

肉は豚、牛、馬、めん羊、山羊、家きんの肉の10g以上の塊(肉塊)であり、ウサギの肉を含む挽肉をつなぎとして認め、つなぎは20%以下である。
※wikipediaには、家禽(かきん)は肉塊には入らず、つなぎには入ると説明していますけど、これは誤りです。

さらに「規格」に特級、上級、標準があって、「標準」の規格はこうあります。

水分:60%以上75%以下
肉塊:一片の大きさ、おおむね20g以上、含有率、85%以上
肉以外のつなぎの含有率:5%以下であり、かつ、でん粉(加工でん粉を含。)、小麦粉及びコーンミールの含有率が3%以下

肉塊について、「定義」では10g以上とありましたけど、「規格」では「おおむね20g以上」とあります。
役所用語では「おおむね」というのは8割のことを意味しているそうですから、肉塊全体の8割は16g以上でなければならない。
かつ「定義」にあったように全ての肉塊が10g以上でなければならない。
そういう肉塊の含有率が85%以上であるこ。
そしてつなぎは、肉以外が5%以下であることとなっています。

JASのプレスハムでは、肉以外のつなぎの量は5%以下とかなり少なく決められています。

「品質表示基準」でも同様の定義があって、さらに原材料の表示方法が記されています。

 

◆チョップドハム

さて問題のチョップドハムです。
チョップドハムの規格はJAS規格にも品質表示基準にもありません。

じゃぁ規格がないのかというと、実はあるのです。
「ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約」による規格がしっかりあるのです。

公正競争規約は、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)の規定により、公正取引委員会の認定を受けて策定された表示に関する業界の自主ルールです。

食肉加工業者の業界団体である日本食肉加工協会が公正取引委員会の認定を受けて1992年9月に「ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約」を設定しました。
そして同年10月には規約の管理・運営のために「ハム・ソーセージ類公正取引協議会」が設立されています。
ハム・ソーセージ類公正取引協議会:
http://www.niku-kakou.or.jp/kousei/

「ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約」の中に次の規格があります。
JAS規格にあるもの
ハム類、プレスハム、混合プレスハム、ソーセージ類、混合ソーセージ類、ベーコン類
JAS規格にないもの
無塩せきハム、無塩せきベーコン、焼豚、煮豚、蒸豚、チョップドハム、ジャーキー

そして規約の「別表」にチョップドハムの定義がこうあります。

チョップドハム:畜肉(豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉)、家きん肉、家兎肉の肉片を塩漬したものにつなぎを加えたもの(つなぎの占める割合が50%を超えるものを除く。)を調味料、香辛料で調味し、結着補強剤、酸化防止剤、保存料等を加え又は加えないで混合し、ケーシングに充てんした後、くん煙し、及び蒸煮(又は湯煮)したもの又はくん煙しないで蒸煮(又は湯煮)したもので、畜肉、家きん肉の占める割合が50%以上のもの(プレスハム、混合プレスハムを除く。)をいう。

肉片:畜肉(豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉又は山羊肉をいう。)家きん肉、家兎肉を切断したもので、1g以上のものをいう。

つなぎ:畜肉、家兎肉、家きん肉若しくは魚肉をひき肉したもの又はこれらにでん粉、小麦粉、コーンミール、植物性たん白、卵たん白、乳たん白、血液たん白等を加えたものを練り合わせたものをいう。

畜肉、家きん肉、ウサギの肉の肉片の占める割合が50%以上で、肉片1g以上
つなぎには魚肉を含み、でん粉等の分量の基準はない。

肉塊ではなく1g以上の肉片が50%以上あればチョップドハムだ、ということです。
逆に50%未満は「つなぎ」ということ。しかも肉でなくでん粉や植物性たんぱく等でもいい。

ともあれ、こういう基準があるわけです。
単なる規格外品ではないということです。

 

プレスハムやチョップドハムの国内生産量が「日本ハム・ソーセージ工業協同組合」のHPにありました。
http://hamukumi.lin.gr.jp/data/nenji_seisan.htm

2012年にプレスハムが10,629トン、チョップドハムが16,736トンそれぞれ生産されていて、チョップドハムの方が4割ほど多い。
プレスハムのほとんどは業務用だそうで、店頭に並んでいるのはチョップドハムが多いようです。

スーパーで見かけるのは実はチョップドハムだったんだなぁ・・・。


 
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ぐちぐち

ラムチョップ、なんていう料理をアメリカの小説の主人公がよくぱくついているところから、「チョップドハム」と言われると私などいかにもおいしそうに感じちゃいます。片や「プレスハム」といわれると「ハムの亜流で安物なのネ」テナ印象。朝食会場に「チョップドハム」とあったら身をのりだしてぜひとも三、四枚とりたいですが、「プレスハム」だったら一、二枚でいいナ、となりそうです。
by ぐちぐち (2014-03-09 16:38) 

とんちゃん

>ぐちぐちさん
脂身のないロースハムみたいにも見えるんですよ。
でも実際はかなりの人造ハムなんですって。
プレスハムの方が肉に近いようです。

by とんちゃん (2014-03-11 06:29) 

ぜろ

外国から来た料理で製法がかっちりしてるのは、工夫の余地が少ないというか。
結果亜流のがアレンジが多く入って本家より美味しくなってしまう、日本じゃよくあることです。
by ぜろ (2014-04-17 04:03) 

とんちゃん

> ぜろさん
プレスハムもチョップドハムも、日本流じゃないものがあるそうで、それっていったいどんなものか、食べてみたいものです。

by とんちゃん (2014-04-17 22:29) 

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