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五島うどん:その生産と地獄炊きの発祥地 [食文化]

昨日の記事では、茨城県唯一の五島うどん専門店を紹介しました。

その「五島うどん」について、いろいろ疑問があるので調べてみました。
wikipediaには書かれていないことです。

<目次>
◆「五島うどん」とは
◆五島うどんの生産地はどこか
◆「五島うどん」というブランドの成立
◆そうめんと同じ製法なのになぜ「うどん」
◆五島うどんの食べ方

◆「五島うどん」とは

まず「五島うどん」とはなにか。

wkwikipedia「五島うどん」には、「五島うどん(ごとううどん)は、長崎県五島列島で生産されているうどん。五島手延うどん(ごとうてのべうどん)とも呼ばれる。」とあります。


五島列島で生産されているうどんが「五島うどん」であるというのはそのとおりです。
しかし「五島うどん」が「五島手延べうどん」とも呼ばれる、ということは「五島うどん」と「五島手延べうどん」とは同じものであるが異なる名称があるということですが、それは誤りです。

「うどん」の製法には2つの方法があります。
ひとつは「切麦」で、小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練った生地を帯状に細く切るものです。もうひとつは生地にでん粉や小麦粉または食用油を塗付して、撚りをかけながら引き伸ばすもので、索麺の系譜に属します。
この2つの製造方法は、うどんだけでなく、冷麦や素麺でも同様です。

2つの製法のうち、前者は機械による製麺(機械製麺)があります。
後者が「手延べ」と呼ばれるものです。(本来は「延ばす」作業をすべて手作業が行うものが「手延べ」なのですが、実際には機械で延ばしているものが多い。)
したがって「五島うどん」には、前者の機械製麺による切麦が含まれますが、「五島手延べうどん」は後者だけであり、「五島うどん」と「五島手延べうどん」とは同じものではありません

五島うどんの伝統的な製法は後者の手延べうどんです。
しかし機械製麺のうどんも生産され、今も販売されています。
そのため後述するように「五島うどん」と「五島手延べうどん」の2つの地域ブランドがあります。

 

◆五島うどんの生産地はどこか

「五島うどん」は五島列島全体、各島で作られているのかと思ったら、これが大違い。

五島列島には5つの大きな島を含めて、150もの島があります。 最大の福江島と奈留島、久賀島などを下五島(五島市)、二番目に大きな中通島や若松島などを上五島(新上五島町)といいます。

これら島々の中のどの島で五島うどんが作られているのか?

wikipediaの「五島うどん」には、「五島うどんは乾麺であり主に上五島(新上五島町)で生産される。なお下五島(五島市)では生麺のうどんが生産される。」とあります。


製麺所は上五島と下五島の両方にあるが、主に上五島の島々で乾麺が生産され、下五島の製麺所は少ないながら主に生麺を生産している、みたいに読めます。
しかし事実は全然、違います。

まず、うどんの製麺所のほほすべてが上五島の中通島だけにあります。
「五島手延うどん振興協議会」があって、その会員の生産者は26あります。⇒五島手延うどん振興協議会「会員紹介」

それら生産者はすべて中通島にあるのです。
市販されている五島うどんはすべて乾麺です。
(ますだ製麺は半生麺も販売しています。)

では、下五島(五島市)のメーカーとは?
現在、福江島には製麺所が2つだけあります。
1つは、中本製麺の製麺工場。中本製麺の本社は中通島にあって、福江島の生産者ではありません。

そしてもう1つは、NPO法人五島あすなろ会(2006年設立)が経営する「うまか食品」(2016年3月創業)です。
ここが乾麺と生麺を製造しています。しかしその生麺は、同法人が経営する五島うどん専門店「ばらもん亭」(2017年12月1日オープン)で、「地獄炊き」以外のメニューに提供されます。
生麺の市販はされていないようです。

ということで、五島うどんのメーカーは、下五島(福江島)に1つありますが、それ以外のすべてが上五島(中通島)にあります。
※「うまか食品」は手延べうどんを作っていますが、五島手延うどん振興協議会の会員リストにありません。疑問に思いますが、理由はたぶん、会員リストの最終更新日が2016年1月13日で、その後に誕生した「うまか食品」の情報が反映されていないためと思います。

 

◆「五島うどん」というブランドの成立

五島うどんが誕生したのはいつなのか、については諸説あります。

しかし「五島うどん」という名称が誕生したのは意外に新しい。

wikipedia「五島うどん」には、「五島うどんとは本来、旧上五島町で生産する「船崎うどん」と旧有川町で生産する「有川うどん」の総称である。」と書いてあります。


旧上五島町も旧有川町も中通島にあった町です。

「船崎うどん」は伝統的な手延べ製麺のうどんで、主に地元の家庭消費用にうどんを提供していました。「有川うどん」は、手延べ麺もあったでしょうが、機械製麺で製造した乾麺を主に捕鯨船や遠洋漁業船などに提供していました。(⇒ますだ製麺「麺匠の挑戦」

「船崎うどん」は島内、「有川うどん」は捕鯨船等の船上でも食べられました。しかし島外への流通は非常に限られていました。だから「幻のうどん」と呼ばれていたわけです。

1984年に「五島手延うどん協同組合」が中通島のうどん製造業者12人によって設立されます。
設立の背景は「手延うどんの製造は機械製造の2倍から4倍の人手が必要で、大変手間がかかるうえ、生産性の低い商品て(ママ)あり、安定的な販売先の確保に苦慮していた。そのようななか、外食チェーンより大量一括納入の依頼が入った。これを機に、大量販売先への出荷を自的に12社が集まって組合を結成した。」とあります。(⇒長崎中小企業団体中央会「県内組合事例紹介」
そして組合の統一ブランド「波の絲」を設定して共同販売を開始したそうです。

これによって「五島うどん」の名称が正式に誕生したことになります。

テレビ東京の「TVチャンピオン」の2003年1月9日放送「全国うどん職人選手権」に讃岐、稲庭、加須とともに五島うどんの職人も参戦して売上高勝負をしました。
そこで「稲庭うどん」についで「五島うどん」が第2位になったことが、「五島うどん」が全国的に有名になる大きなきっかけだったようです。

2004年に有川町・上五島町・若松町・新魚目町・奈良尾町の5町が合併して新上五島町が発足した。これがきっかけなのか、2005年には、地元のうどん製麺業者、34業者が参加して「長崎県五島手延うどん振興協議会」が結成されます。(⇒(株)長崎五島うどん「会社情報」
国土交通省のサイトに内にある長崎県五島手延うどん振興協議会の資料には、34業者の紹介があります。この作成時期は2007年なので、協議会発足当初の業者が網羅されているとみられます。(⇒長崎県五島手延うどん振興協議会「五島手延うどん」
34業者のうち33業者は中通島ですが、福江島の業者(1業者)も入っていて、五島全体の業者を網羅していたようです。(福江島の業者は先述の「うまか食品」とは別で、現在は廃業らしい。)

そして2007年に「五島手延うどん協同組合」が「五島手延べうどん」「五島うどん」の地域団体商標を登録。また同年、生産地全体を売り込む販売会社として「株式会社長崎五島うどん」が設立されました。

こうして、「五島うどん」のブランドは1984年の成立しました。しかしそれは業者の一部でした。全業者が「五島うどん」を名のれるようになり、全国販売を本格化するのは2005年からのことです。意外に新しいんです。

 

◆そうめんと同じ製法なのになぜ「うどん」なのか

五島手延べうどんは、「そうめん」と同様の製法で作りますが「うどん」です。
理由はその形状です。

五島うどんは直径2mmで、うどんとしては非常に細い。
日本農林規格(JAS)の「乾めん類品質表示基準」では、麺の太さによって名称が決められていて、機械製麺の場合、そうめんは直径1.3mm未満、ひやむぎは直径1.3mm以上1.7mm未満で、うどんは1.7mm以上となっています。また手延べ製麺の場合には、1.7mm以上はうどん、1.7mm未満はひやむぎ、またはそうめんになります。

五島うどんは直径2mmだから、そうめんではなく、うどんに分類されるんです。

 

◆五島うどんの食べ方

五島うどんの食べ方としては「地獄炊き」が有名です。
しかしこれは上五島だけで食べられているらしい。

五島うどんは、元々は中通島だけ作られ中通島だけで食べられていたものですから、地獄炊きも上五島の中通島だけで食べられていたのでしょう。

もうひとつ、五島列島内では、うどんの出汁に地域性があるそうです。
上五島では「アゴ出汁」で食べます
しかし福江島を含む下五島では鶏出汁で食べるそうです。
(五島福江 「椿茶屋」:https://korokoro10.exblog.jp/27929650/

だから「五島うどんをアゴ出汁で食べる」というのは上五島の文化、しかも元々は五島うどんが生産されている中通島の食文化ということのようです。


 
タグ:うどん
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通りすがり

下五島と上五島がごちゃまぜになっている。よい記事だが、残念。
by 通りすがり (2023-05-22 13:00) 

とんちゃん

> 通りすがりさん
ありがとうございます!
ご指摘のとおり下五島と上五島が混乱した文章になってました。ひどいもんです。(溜息)
修正しました。これで正確になったと思います。(たぶん)
by とんちゃん (2023-05-23 07:01) 

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