昨年末に朝日新聞に載っていた記事。
「減らぬ福島の震災関連自殺 長引く避難生活、ストレスに」(2015年12月28日朝日新聞デジタル)
東日本大震災が原因の自殺者数についての記事です。
震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県の震災関連自殺者数は、集計を始めた2011年6月から今年11月末までで計154人に上る。
宮城県、岩手県では自殺者数はそれぞれ減っている。
震災直後の11年はそれぞれ22人、17人だったが、今年は11月末まででそれぞれ1人、2人になった。
(1人や2人でも自殺者がいるってことが問題ですが、それでもまずは減ったということ。)しかし福島では11年以降毎年2桁の自殺が続いている。
という記事です。
ところが、どうもそれだけではないと思います。
掲げられた図はこれです。
震災の自殺者数は、内閣府自殺対策推進室が集計したもの。
内閣府「自殺の統計」のページに、最新の震災関連自殺者数が示されています。
そこに、平成27年12月22日付けの内閣府自殺対策推進室の資料が示されています。
内閣府「自殺の統計」:http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/
図を見ると、宮城県、岩手県では確かに自殺者が少なくなった。
では福島県はどうでしょう。
依然として2桁とか、「減らない」とかではなく、「増加している」と私には見えますが、どうでしょうか?
福島県では「自殺者が増加している」。
そう言うべきではないでしょうか。
岩手県、宮城県では遅れていた住宅の復旧も徐々に進み、仮設住宅からの退去も進みつつあります。
福島県でも相馬市のように、避難指示区域に指定されず原発による強制的避難者がおらず、災害復興住宅などの団地が完成して仮設住宅が無くなったところもあります。
しかし、帰還困難区域(間積算量50ミリシーベルト超)や居住制限区域(年間積算線量20ミリシーベルト超)で、居住が制限されている地域では、帰還の見込みが立ちません。
また居住制限が解除される避難指示解除準備区域(年間積算線量20ミリシーベルト以下)でも、解除後の居住に不安があります。
ある日突然に立ち退きを命じられ、強制的に故郷から引き離され、しかも戻ることが出来ず、仕事も奪われる。
そういう状態を自分に想像してみることができるだろうか。
いまの自分の生活をすべて消去し、しかも故郷を奪われることを想像すると、それは恐ろしい。
避難先で職をみつけて、新しい生活を始めた人たちもいるでしょう。
しかし高齢者などはそうはいかない。
かつてはあった、ご近所の人たちとのコミュニティー。それがない中での生活だとしたら。
そしてそんな生活がいつ終わるのか見当がつかないとしたら。
このままでは、自殺者がさらに増える可能性さえあると思います。
どう解決したらいいのか、その処方箋をわたしが持ちえているわけではありません。
自分に出来ることは、福島のこと、福島の人たちのことを忘れないこと。
これだけは日本の国民として心に決めたい。
自殺者数について、もう少し述べたいと思います。
先の自殺者数を原資料から表にしました。(後掲)
年齢別にみると、15年は70歳以上満の割合が多い。
その一方で30、40歳代も多くなっています。
職業別では、高齢者の「年金・雇用険等活者」が多いですが、30、40歳代は「自営業・家族従業者」や「被雇用者・勤め人」でしょうか。
県別のデータがないのですが、自殺者数のほとんどは福島県なので、原発による自殺者は、高齢者だけでなく、より若い世代にまで広がっているといえそうです。
福島県の自殺者数が増加傾向にあり、より若い人に広がっているということではないか。
そうだとすると、原発による苦痛はより深刻になっているのだと思います。
◆東日本大震災に関連する自殺者数
◇年齢別
計 | 20歳未満 | 20-29歳 | 30-39歳 | 40-49歳 | 50-59歳 | 60-69歳 | 70-79歳 | 80歳以上 | |
2011年6~12月 | 55 | 1 | 4 | 4 | 4 | 11 | 19 | 7 | 5 |
2012年 | 24 | 0 | 2 | 4 | 3 | 5 | 5 | 2 | 3 |
2013年 | 38 | 0 | 4 | 3 | 6 | 13 | 2 | 3 | 7 |
2014年 | 21 | 1 | 1 | 1 | 4 | 5 | 7 | 2 | 1 |
2015年1~11月 | 20 | 0 | 1 | 4 | 2 | 2 | 2 | 7 | 4 |
◇職業別
計 | 自営業 ・家族 従業者 | 被雇用 者・勤 め人 | 無職 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
計 | 学生・ 生徒等 | 無職者 | |||||||||
小計 | 主婦 | 失業者 | 利子・ 配当賃 等活者 | 年金・ 雇用険 等活者 | その他 の無職 者 | ||||||
2011年6~12月 | 55 | 10 | 13 | 32 | 1 | 31 | 3 | 6 | 0 | 14 | 8 |
2012年 | 24 | 3 | 5 | 16 | 0 | 16 | 0 | 3 | 0 | 7 | 6 |
2013年 | 38 | 1 | 10 | 27 | 0 | 27 | 6 | 3 | 0 | 7 | 11 |
2014年 | 21 | 1 | 3 | 18 | 1 | 17 | 3 | 1 | 0 | 6 | 7 |
2015年1~11月 | 20 | 2 | 3 | 15 | 1 | 14 | 1 | 0 | 2 | 8 | 3 |