東京には“味噌ラーメンまがい”が多い。
「サッポロラーメン」という看板を出していようといまいと、本物の(というか普通の)味噌ラーメンを出しているところはとても少ない。
東京には“味噌ラーメンまがい”が多い。
「サッポロラーメン」という看板を出していようといまいと、本物の(というか普通の)味噌ラーメンを出しているところはとても少ない。
とはいえ東京だと、西早稲田のえぞ菊本店がお勧めだろうか。しばらく前から壱源(渋谷)とか味源とかの店ができてきて、普通の(すばらしい、という意味ではない)味噌ラーメンを食べることができるようになった。ちなみに六本木の天鳳は醤油がオススメ。有楽町の芳蘭は高すぎ。
まがい味噌ラーメンを出す店ではさらに共通した過ちが犯されている。
その1つがモヤシ。
味噌ラーメンにはモヤシが入るべきと思ってか、できあがったラーメンに冷えたモヤシをトッピングする店が多い。おかげでスープは水っぽくなるわ、麺は冷えるわで呆れてしまう。
モヤシを入れるなら、注文に応じて炒めてからスープといっしょに煮る、というのが札幌では常識だ。それを知らないままに、シナチクと同じようにトッピングするのは大きな誤りだ。
もう一つが、薬味。
さらにそういう店では「七味唐辛子」を置いているところが多い。しかし味噌ラーメンの薬味は「七味唐辛子」じゃなくて「一味唐辛子」を使うのもこれまた常識。いや札幌だと通常は豆板醤が置いてあり、好みによってはそれを使えるようにしてある。これを入れると風味と塩気が増す。
だから一味唐辛子と豆板醤を置いていない店では味噌ラーメンを食べてはいけない。そんな店ではきっと“味噌ラーメンまがい”が出てくる。
もっと言うと、味噌コーンバターは邪道だ。
なぜ邪道かって? まあ、コーンはいいとして、バターはいけない。バターの味にだまされてスープの味がわからなくなるからだ。背油系も油でスープの味がわかりにくくなるけど、バターの場合は独特の香りもあってさらにいけない。私がバター入りが邪道というのは天鳳の先代の影響だ。このことは後述しよう。
でもバターが食べたい人は食べたっていいですよ。まあ好みですから。カニラーメンみたいに観光客相手に常軌を逸したものよりはいいからね。
ずいぶんとバターを攻撃しているけど、バターを入れると不味くなる、という意味ではない。むしろその逆で、旨くなる。バターの旨みのせいで、不味いラーメンも旨くなる。だからバターを入れてはいけないのだ。
ついでに麺について。札幌ラーメンというと西山製麺が有名だ。東京あたりでそこの麺をわざわざ使っている店もある。確かに有名な製麺所なのだが、札幌でラーメンにこだわる店では、西山の麺を使わずに、そこから独立した小林製麺などの麺を使う店が多い。店独自の製法で麺をつくってもらうためだ。
六本木の防衛庁前にある天鳳のルーツは、札幌のラーメン横町にある天鳳だ。そこには先代のときによく通った。そのオヤジは、昔、ドラムカンでスープをとったことがあって、それがマンガ「包丁人 味平~ラーメン編~」のモデルになった。そのオヤジの言ではラーメンのスープを味わえるのは塩と醤油だとのこと。味噌は客が注文するからつくっている、というスタンスだった。「客の顔を見ればどんなラーメンが好きかわかる。ただラーメンと注文すれば好みのラーメンを出してやる。」なんてことも言っていた。
その札幌の天鳳には黄色いプラスチック製の板が掲げてあって「しょうゆ、しお、みそ、バター」というメニューに並んで「麺 かたく・やわらかく、油 こく・うすく、味 こく・うすく」と縦書きで印刷されている。
その掲示板はラーメン横町共通のもののようだった。その板の「バター、麺 やわらかく、味 うすく」にはマジックで「×」が書かれている。「そんなものは出さない。」ということだ。どうしてもほしいという客には「出て行ってもらう」とまで言っていた。
その逆に「×」がついていない部分は、客の好みでどれを選んでもいい。六本木・天鳳では「一三五を注文しろ」なんて話がwebによく出てくる。先の掲示板の「麺、油、味」の部分に1~6の番号を振ると、「麺かたく、油こく、味こく」が「一三五」になる。店主からするとそれがお勧めだってことだ。しかし先代はそこまで好みを押しつけてはいなかった。客も通ぶって、それを注文する必要もない。