テーブルには、柿を使った突き出しが用意されていました。
柿をくりぬいた中に、中に鶏肉とタコを大根おろしと合えたものが入っています。透き通った緑色は、ブドウです。
タコがずいぶんと柔らかく煮られているのが不思議です。
「柿とは不思議ですね」とマスターに言うと、「柿のタンニンは酔い止めに、大根おろしは消化にいいんです」と、効能を語ってくれました。あら、そこまで考えているんですかぁ、ってYさん始め感心してしまいました。
最初の料理は、お造り。
エビ、真ダコ、マグロ、ソイ、ツブが見えます。ツブのキモが手前にあえいます。マグロの下に、ホタテもありました。
もう日本酒に切り替えます。
酒は、「オーナーが用意してあります」というのを出してくれました。
新聞紙に包んだ上に、ラベルが貼ってあります。
「龍勢」の「秋の蔵出し 特別吟造り純米中取り」という酒です。
広島県の藤井酒造の酒です。
「八反錦」という米を「協会6号」で発酵させ、その中取り上槽酒を瓶詰したもので、無濾過とのこと。
精米歩合は60%ですから、吟醸酒並です。日本酒度は+1。
ただ酵母の種類からすると、新政の酵母である協会6号は、吟醸酒の酵母ではないけど、吟醸と同じ低温長期醗酵なので、「吟造り」ということなのでしょう。
マスターがグラスに注いでくれました。
穏やかな香りで、ソフトな淡麗さ。切れもいい酒です。こういう感じの酒はいいですね~。
酒はオーナーが選んでいるそうです。その酒を店に出すのは一升瓶の栓を切ってから2、3日のみにしているんだそうです。
それを過ぎた酒は、オーナーの立ち呑み屋で出すのだそうです。
新聞紙にラベルが貼ってあるんですね、と驚くと。
升瓶に新聞紙が巻いてあるのは遮光のため。光で酒の味が変わるからふだんはこの新聞紙は剥がさないですけど、いいでしょう、と言いつつマスターが新聞紙を剥がしてくれると、瓶自体には銘柄のラベルが貼っていません。
ついで出てきた料理は、寒ブリ。よく漬かった漬け物が添えてあります。
「龍勢」をもう1杯呑み、ブリを食べたあとで、別のお酒があるのかどうか、聞いてみました。
全員の分がないんですけど、ということですけど、いいです!とお願いしました。
まず、グラスを替えてくれます。
酒が替わると、前の酒の味が移るからと、グラスも替えるのです。すばらしい!
出されたのは「奥播磨 誠保(じょうほ)」という酒。
「生酛 純米 ひやおろし」。
原料の酒米は兵庫の夢錦。精米歩合55%、日本酒度は+7、アルコール度数17.3、酸度3.2。
酸味とフルーティーさがある芳醇なお酒です。ワインに近い味わいです。
酵母菌が発酵する酸度をつくるために、乳酸菌を加える「速醸」に対して、昔ながらに蔵に生息する乳酸菌で自然に乳酸発酵させるのが生酛。
全員の分がないから、とグラスに8分目ほど注いでくれました。
料理は、牛肉のデミグラスソースかけ。愛別名産のマイタケも合えてあります。
ワイン風の「誠保」が、この濃厚な料理にはよく合います。
天ぷら。サックリと揚がってた天ぷらを塩でいただきます。塩は、ピンク色をした岩塩でしょう。
「龍勢」1升を呑みきり、別の日本酒を飲んだけど、銘柄を確認してません。
最後の料理は寿司です。ヒラメの縁側なんかが並んでいます。
ネタはもう、旨い!
小振りのシャリが軽くホックリ握られていて、つまみとしては実にいい感じです。
制限時間の2時間になるところで、もう一杯だけお酒をもらいました。
何杯呑んだかもうわかりません。
美味しい料理でした。とっても満足です。
「では二次会に、ここのオーナーの店に行こう」と言って店を出ました。
オーナの店『ゆきちゃん』に電話すると、誰も出ません。
不安になって樹花に電話すると、「今、満員だそうなので、よかったらまた店に戻りませんか?」と言ってくれるので、お言葉したがって樹花にもどりました。
さっきまで座っていた席に座り直すと、マスターがつまみと日本酒を出してくれました。
つまみは、冷や奴に三升漬けを載せたもの。青唐辛子がピリッと効いていて、三升漬けだけでも上手い。三升漬けはもちろん自家製です。
しばらくして、酒を飲みきってから店を出ました。すっかり気分がいいです。
ホテルに一度戻りましたけど、やはり心残り。やり残した気持ちを払拭できず、Yさん、Iさんと3人で、ゆきちゃんへ向かいました。
最後に、この店の日本酒は揃えがいいわけではなく、オーナーお気に入りの蔵元の銘酒がいくつか用意されていて、そこから選ぶシステム。
料理もお酒も、店におまかせ、という感じかな。それが気に入れば、素晴らしいお店です。