中に入ると、そこは土間。室内への木戸は閉まっています。
左手の部屋から楽し気な話し声が聞こえるんですけど、入っていいものかどうか迷ちゃう。
「ごめんくださーい!」と声を上げてみる。
「お客さんだよー」と左の部屋から男性の声。
すると奥の扉が開いて、奥様らしき方が出てきます。
「あのー、入ってはいっていいですか?」
「どうぞ、お入りください」と言って、奥様はまた奥へ引っ込んでしまった。
しかし、どこに入っていいものなのか・・・
迷ったけど、靴を脱いで、話し声がする左手の木戸を開けました。
そこには畳の座敷があって、中央に囲炉裏がある。
床に組み込んだ囲炉裏ではなく、座卓型の囲炉裏です。
先客らしき方が2人いて、1人はビールを飲みながら、蕎麦を食べています。
後でわかったんですけど、蕎麦を食べているのがお客さんで、もう1人はご主人。
しかもお客は「しのぶあん」の創業者。
そのしのぶあんの創業者さん、ここのご主人が自衛隊を退職された後に、この古民家で蕎麦屋をやってはどうかと勧めて、蕎麦打ちを教えた師匠だそうです。
ここのご主人は、自分の楽しみとして蕎麦を打っているので営業は土日のみ。
しかも基本は1日に1kgのソバ粉で蕎麦を打つのみ。
だから1日に8食の蕎麦しかありません!
とはいえ蕎麦を打つ時間(30分間ほど)を待ってくれるなら、追加の蕎麦をいただけます。念のため来店前に電話すれば、来店までの時間に蕎麦を打ってもらえます。
さて、メニューですが。
温かい蕎麦が「いも煮そば」、冷たい蕎麦が「板そば」。
サイドメニューで、玉こんにゃく、げそ天、にしん(身欠きにしん)があります。
ここのご主人は山形県の内陸部・大石田町のご出身。だから山形郷土料理のオンパレードです。
「板そば」は山形県の内陸部で食べられている蕎麦の食べ方。
「玉こんにゃく」は山形県民のソウルフード。
「げそ天」は山形県民の熱愛グルメだと、2021年6月10日放送の「秘密のケンミンSHOW極」で言っていましたね。山形県のそば屋には必ずゲソ天があるそうです。
「身欠きにしん」も山形の郷土料理です。
今回は「板そば」のみをオーダーしました。
◆板そば
【そば処 いろり】の銘が入った箸袋から割り箸を出して、いただきます!(合掌)
蕎麦は灰色で星が見えます。
薬味のネギとワサビ、そして沢庵とキュウリの漬物。
漬物はなんと、山形産だそうです。
そばは、蕎麦粉のザラついた食感があり、噛むとしっかり硬い。そして蕎麦の香り。
粗挽き蕎麦粉を使った十割蕎麦です。
山形県の大石田町産「来迎寺在来」という在来種のソバを自家製粉して手打ちしたもの。
そば汁は、カツオの香りが穏やか。本鰹がメインの出汁のようです。
そして醤油の味がしっかりしてる。山形県の醤油(紅谷醸造)を使っているそうです。
小皿にゼンマイとさつま揚げの煮物があります。
このゼンマイも山形産ですって。
山形産の素材に拘って蕎麦も料理もつくっていますよ。
蕎麦をいただくと、ご主人が蕎麦湯を運んで来てくれました。
サラリとした蕎麦湯。
8人分しか茹でないんですから、トロトロの蕎麦湯になんかにはなりません。
蕎麦湯を注いだ汁が美味しい。
このお店のご主人は、料理だけでなく、拘りの品々も集められている。
囲炉裏の上の火棚には、草鞋やカンジキ。
長い籠のようなものは「弁慶」ですって。弁慶は中に藁が詰まっていて、焼いた川魚を串ごと刺して保存するそうです。串が刺さった姿が、衣川で義経をかばい、矢を受けて立ち往生した弁慶の姿に似ているから「弁慶」というらしい。
奥にも囲炉裏のある部屋がもう一室あります。
そこに化粧まわしが飾られている。なんと輪島関から贈られたもの。
それがなぜここにあるか・・ブログでは秘密。
玄関の土間にもいろんなものがあります。
壁には蓑。
稲の脱穀機。足踏み式のチヨダ式国光号。
これは唐箕(とうみ)。お米の籾(もみ)を臼でついたあと、風力でもみ殻などを飛ばして、玄米を選別する道具です。
そんな品々を眺めて、ご主人のお話を伺うのもまた楽しいですよ。
今回は板蕎麦だけでしたが、次回は家族出来て、そのほかの料理もぜひ楽しんでみたいです。
ごちそうさまでした。
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