お店の中に入ると、照明が消えていて暗い。
「ごめんくださ~い!」と呼べども、誰もいません。
2時をとうに過ぎているからね。どこかに出ちゃったかな?
そのうち帰ってくるでしょう。まずは窓際の席に座りましょうか。
店内を眺めると、店の奥には、お好み焼き用の鉄板が設置されたテーブルもあります。
やっぱりお好み焼きのお店でもあるみたいです。
壁にメニューがいっぱい掲げてあります。
黒板のメニューは、丼物やご飯物、
そして「うどん物」ですか、やはり関西ですね。
「鬼そば」、ちゃーんとありますね。500円です。
「学生そば」っていうのがある。でも値段が消えてますね。
お好み焼きもいろいろあります。
ざるそば600円、学焼大200円、小100円、学ソバ入り200円。
学生料金は成美高校生用でしょうね。
そこへお店の人が帰ってきました。小柄なおばあちゃんです。
「あら!ごめんなさい!」京都方言のイントネーションです。
いえいえ、いいんですよ。こんな時間に来る客なんていませんから。
「なにになさいますかぁ?」
「鬼そば、ありますか?」
「はい、ありますよ。」
「じゃぁ、お願いします。」
「はぁ、でも、にしんそばはいかがですかぁ?鬼そばは、なんにも入っていない、かけそばですから。」
さすが京都府。にしんそばがお奨めですね。
「にしんは好き嫌いがありますけど、にしんが入っていた方が美味しいですよ。」
「にしんそばあるんですか?おいくらですか?」
「650円です。」
「じゃあ、にしんそばお願いします。」
売上げを伸ばそうっていう魂胆じゃないでしょう。きっと親切心からのまさに老婆心。
にしんそば、にしんそば・・・やっぱり壁のメニューにないですね。
「メニューににしんそばってないですね。」
「・・・。あら、ほんまに、メニューにないですねぇ。こんど書いておかな、いけませんねぇ。」
いつから書いてないんでしょう・・・。
この店では時間が止まっているようです。そんな感じがこころを和ませます。
テーブルの上には赤い漆塗りの箸立てと楊枝立て。
歴史を感じさせます。長く止まった歴史。
「ふたば食堂」と書いてあります。これが本来の店名でしょうか。
しばらくして、にしんそばが運ばれてきました。
湯気が立ち上っています。
透明なお汁の中に黒く太い蕎麦が沈んでいます。これが鬼そばですね。
まずがお汁を・・。
カツオの香りが鼻から抜けて行きます。薄口醤油の汁が旨い。
「出汁がおいしいですね!」
「そうでっしゃろ、お蕎麦も美味しいですよ。」
おばあさん、自信に満ちていますね。
太く黒い蕎麦です。
噛むと、弾力があって、硬い。
小麦粉が入っているのか生粉蕎麦(10割蕎麦)か、ちょっとわかりません。山芋がつなぎに入っているかもしれません。
「七味唐辛子ありますか?」
「あら、ごめんなさい!」
小袋入りの七味唐辛子がコップみたいな器に入っています。
お店で小袋入り七味は珍しい・・・でも湿気らないからいいかもね。
ニシンもいただきます。美味しいですね。
乾燥した身欠きニシンを水に戻して、味を付けて。海から離れた京都で出来上がった、手間のかかる魚料理。
でも、子ども時代に身欠きニシンが嫌いだった私は、そんな「にしん蕎麦」ってあんまり嬉しくはないんですけど・・・でも、美味しいです。
「鬼そばって、どこのお蕎麦ですか?」
「大江山の蕎麦です。」
「大江山から取り寄せているんですか?」
「はい、そうですよ。」
鬼そば屋のそばを取り寄せているんだろうか・・。
お蕎麦少ない感じだし、ニシンもあるから、ご飯をいただきました。
漬け物が付いてきます。高菜かな?
菜っ葉は美味しいんだけど、漬け物にさらに醤油がかかっていて、しょっぱいです。(苦笑)
「これなんていう野菜ですか?」
「かっぱ菜です。」
「かっぱ菜?」
後で調べたら、この地方では高菜のことを「かっぱ菜」というそうです。
ずいぶんと前から時間が停止したような和み系のお店で、おばあさん自慢のお蕎麦。美味しかったです。ごちそうさまでした。
これを書いていて気がつきましたけど、「ざるそば」って鬼そばのざるってことかなぁ。だったらそれを注文してもよかったかな。
このお店は、親子丼もなかなか美味しいそうですよ。
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