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オリンピックに集中して、震災も福島も忘れよう!(2) [3.11以後]

安倍首相は本当はそう思っているのではないか、そういう意味です。
もちろん、そうあってほしくないし、そうなってはならない。

ここではオリンピックと震災との関係について新聞の社説を並べることにしました。

日本時間の9月8日(日)未明、東京でのオリンピック開催が決まりました。
日曜未明の決定だからその日の朝刊での記事掲載無理。
しかしなんと、翌月曜日が「新聞休刊日」なもんで、10日火曜日の朝刊でやっと各紙の社説や記事が載りました。

以下、全国紙3紙と東京新聞の社説の一部を掲載します。

◆毎日新聞
「20年東京五輪 未来への遺産を作ろう」

毎日の社説は、後段でこう書いています。

「IOC総会の直前になって福島第1原発の汚染水問題がクローズアップされた。ブエノスアイレスの記者会見で招致委員会の竹田恒和理事長が福島から約250キロ離れていることを挙げ、「東京は絶対に安全だ」と答えたのは、今も原発事故に苦しむ人々への配慮に欠けた。
安倍晋三首相も最終プレゼンテーションで「(福島の)状況はコントロールできている」「(汚染水は)完全にブロックできている」と懸念の払拭(ふっしょく)に努めた。だが、2年半が経過しても事故処理の見通しがつかない現状を見れば、事実関係とその認識は極めて疑問だ。メディアを通して世界中に発信される言葉の重みと責任を自覚せねばならない。」

適切な指摘と思います。

まず、竹田理事長の発言。
「東京は絶対に安全だ」と答えたのは、今も原発事故に苦しむ人々への配慮に欠けた。」という指摘は、まさに正しい。
「**はAだ」という日本語は同時に「**以外はAではない」ということを意味するのです。
(「は」は係助詞で、他と比較・区別する働きがります。)
すなわち「東京は安全だ」ということは、東京以外(福島など)では安全ではない、と言っているに等しいのですから。

そして安倍首相の発言に対しては、「現状を見れば、事実関係とその認識は極めて疑問だ」と断罪しています。

 

◆東京新聞
「2020年 東京五輪 成功の条件 原発事故を封じ込めよ」

「2020年の五輪開催を勝ち取ったとはいえ、成功に導くまでのハードルは高い。東京勢が売り込んだ「安心、安全、確実」。世界から後ろ指をさされないよう原発事故の封じ込めが欠かせない。

・・・その半面、もろ手を挙げて喜ぶ心境になれない人も多いのではないか。最大の気がかりはほかでもない、福島の原発事故の行方だ。
とりわけ汚染水漏れの問題には、海外メディアから厳しい視線が注がれている。国際オリンピック委員会(IOC)の総会本番でも案の定、委員から質問が出た。

国内ではともすると日常の風景に埋没しがちだが、世界は不安を覚えている。安倍晋三首相は「状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えない」と強調したが、説得力を欠く

原発の敷地内では刻一刻と大量の汚染水が発生し、海に流出しているのだ。政府が前面に立って対策に乗り出す方針を打ち出したのはIOC総会の直前だった。
招致を有利に運ぶための方便だったのではないか。疑念を晴らすには情報を公開しつつ有効な手だてを素早く講じることだ。国の信用が懸かった国際的な約束だ。

東京さえ安泰であれば事足りると響く発想も戒めたい。福島をはじめ東日本大震災の被災地の切り捨てにつながりかねない。
選手が落ち着いて競技に集中でき、観衆が安心して泣き笑いできる環境は被災地の復興抜きには成り立たない。立ち直った東北と首都東京の健在ぶりを示すことこそが最善のおもてなしになる。」

安倍首相の「状況はコントロールされている。」という発言には「説得力を欠く」と断言しています。
「政府が前面に立って対策に乗り出す方針を打ち出したのはIOC総会の直前だった。招致を有利に運ぶための方便だったのではないか。」と迫る。
わたしにもそうとしか見えない。

また「東京さえ安泰であれば事足りると響く発想も戒めたい。」という指摘は、竹田理事長の発言へのものだろう。
そういう考えが「福島をはじめ東日本大震災の被災地の切り捨てにつながりかねない。」とも指摘する。

 

朝日新聞
「東京五輪―原発への重い国際公約」

「福島第一原発事故の収束は、そもそも五輪とは関係なく取り組むべき問題だ。
ただ、東京開催の決定にいたる過程で、世界が日本の姿勢に厳しい目を注いでいることがあらためて示された。
安倍首相は招致演説で、汚染水問題に「責任をもつ」と表明した。記者会見では、原発比率を下げていき、今後3年間で再生可能エネルギーの普及と省エネを最大限加速させることも明言した。
世界に向けた公約だ。内外に「五輪誘致のための方便」ととられないよう、実行力が問われる。政権の最優先課題として取り組んでほしい。

「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」――国際オリンピック委員会(IOC)総会での安倍首相のプレゼンテーションと質疑応答は、歯切れがよかった
必ずしも原発事故の問題に精通しているわけではないIOC委員には好評で、得票にもつながった。
だが、この間の混迷ぶりや放射能被害の厳しさを目の当たりにしてきた人には、空々しく聞こえたのではないか。
確かに、汚染水問題で国が前面に出る体制は整えたが、うまく汚染の広がりを食い止められるかはこれからだ。
すでに技術的な課題が多く指摘されている。汚染水が地下水に到達したとみられるデータも検出された。今後も想定外の障害が出てくる可能性がある。汚染水をうまく解決できたとしても、さらに困難な廃炉作業が待ち受ける。
「安全・安心」を強調するあまり、事態の深刻化を隠そうとしたり、批判を恐れて必要な措置に手をこまぬいたりするようなことは論外だ。
現状と自らの取り組みを率直に公開し、世界の知恵を借りながら対策を講じていく謙虚な姿勢こそが、国際的な信認につながることを忘れてはならない。
エネルギー政策についても、政権の発足以降、「原発回帰」をにじませる発言が出る一方、長期的なビジョンは何も打ち出していない。
事故からすでに2年半が経とうとしている。どのように原発比率を下げていくか。再エネ、省エネの普及をどんな手立てで実現するのか。将来像を語り、具体的な道筋を示すことが首相のつとめだ。
日本での五輪開催の決定は、そうした取り組みを促す契機になってはじめて、心から喜ぶことができる。」

引用が長くなったけれども、内容はどうも・・・

・安倍首相の質疑は歯切れがよかったが、原発事故問題に素人のIOC委員には好評だった。
・内外に「五輪誘致のための方便」ととられない。
・この間の混迷ぶりや放射能被害の厳しさを目の当たりにしてきた人には、空々しく聞こえたのではないか
などなど、揶揄的あるいは、客観的というのか他人事のような書きぶり。
朝日らしいといえば、朝日らしい・・・

 

◆読売新聞
「2020年東京五輪 復興と経済成長の起爆剤に」

「・・・最も懸念されたのは、海外でも報じられている福島第一原子力発電所の汚染水問題だった。」として「汚染水問題の収束急げ」と小見出しを掲げる。

「安倍首相は、IOC側の質問に対し、「影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」「福島近海でのモニタリング数値は、最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水ガイドラインの500分の1だ」などと説明した。具体的事実を挙げて、五輪開催への影響を明確に否定したことが、IOC委員が抱く不安の解消につながったと言えるだろう。政府は今後、着実に汚染水問題を収束させねばならない。」
「安倍首相が、経済政策であるアベノミクスの「第4の矢」と言うほど、五輪への期待は極めて大きい。・・・五輪開催を東京だけでなく、東日本大震災の被災地、さらに日本全体の活性化につなげたい。」

この社説はいただけない。

第1に、安倍首相は本当に「具体的事実」を挙げて明確に否定したのでしょうか?
この指摘は、新聞として事実誤認ではないでしょうか。
「影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」ことが事実ではないことが、後に読売新聞自身によっても報道されますから。

そしてもう1つ、福島での問題は「汚染水問題」だけなのでしょうか。
除染問題、避難者の問題、そして廃炉への道など、福島だけでも問題はもっと大きい。
そういうことに触れもしないで、最後に「被災地の活性化」を語っても空しく感じるだけです。


 
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式守錦太夫

はっきりと各紙の論調が分かれました。
やっぱり見比べると、露骨にわかりますよね。
読売の意図的楽観主義、朝日の他人事のように文句を言うあたり――。
そしてとんちゃんさんのご指摘通り、招致のための為政者の軽々しい発言には首をかしげざるを得ないです。

でも日本人って、ディベートが上手ではないですよね。
汚染水問題を持ち出したのは、対立陣営のネガティブキャンペーンですから、
そこを持ち出す卑怯さを、しっかりアピールしないからこうなってしまうと思うのです。
安倍首相が「汚染水、まだコントロールできていません。
復興もまだまだです。
でも7年後、皆さんに喜んで来ていただくために、私は汗をかきますから、
皆さんも一緒になって応援してください」
ってスピーチしちゃいけなかったのでしょうかね。

私、スポーツって大好きです。
喜怒哀楽、艱難辛苦、全部ひっくるめてもらい泣きするほどの共感を感じるから。
その最高峰が五輪だと思っているのです。
戦争も災害も、別れも憤りも、その一瞬忘れられるじゃないですか。

でもいろいろな意見を見聞し、自分の意見を持つことが、
成熟した民主主義だと思います。
被災地に何度も足を運ばれたとんちゃんさんの、思想もまた良く理解します。
今後もどうぞいろいろお導き下さい。

余計な意見でした、失礼しました。

by 式守錦太夫 (2013-09-15 18:59) 

とんちゃん

> 式守錦太夫さん
コメントありがとうございます。
1つの意見として書かせてもらいました。

話しは違いますが、かつて、福島第一原発の事故直後に原子力安全・保安院の広報担当で、その後更迭された西山が、記者会見で発言した言葉が今でも忘れられません。
原発から流れ出ている汚染水の行方についての説明で、親潮に乗って南下するけど、南からの黒潮とぶつかって、それ以上南には行かずに、太平洋に出て行くから大丈夫ですと説明していた。
当時、テレビでこれを聞いてビックリしました。
東京は安全ですという発想、そして太平洋に出て行った汚染水はアメリカに至るということを全く無視していることを。
しかし日本しか、しかも東京しか見ていない本音がよく出ていました。
さすがに気がついたのか、彼は二度とこの説明をしませんが。

それから2年以上が経ち、福島や東北のことなど見ようとしない官僚や政治家が何を考えているのか想像がつきます。

わたしもオリンピックが大好きです。
だから一層、怖さを感じます。
決して忘れてはいけない、そう思います。
by とんちゃん (2013-09-16 05:31) 

飛龍家木偶

最後の方に福田首相が出てますが、安倍首相では?
by 飛龍家木偶 (2013-09-16 13:04) 

とんちゃん

> 飛龍家木偶 さん
ありがとうございます。
訂正しました。m(_ _)m
by とんちゃん (2013-09-17 12:31) 

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