魚を仕事人の技で楽しむ たぬき@鹿児島天文館 [ 九州・沖縄]
鹿児島の天文館の夜。
魚を美味しく食べられそうな、評判の良いお店に行きましょう。
二官橋通りを南に行ったところに、行灯が出ていました。
「魚どころ たぬき」さん。
その小路を入ったところに、ひっそりとお店があります。
小料理屋風の静かな佇まいのお店です。
きっと一見さんは入らないでしょう。
高そうです。
あれ?でもここ、昨日来たところですよ。
二軒目に寄った「大安」の裏側です。
でも昨夜は、店の存在にまったく気がつきませんでした。(笑)
まぁ、そういうお店ってことです。
紺地に店名が白く書かれた暖簾をくぐって、お店の中に入ります。
店内は手前にテーブル席、奥に5人掛け程度のカウンターの小さなお店です。
先客はいません。
どうぞ、と誘われて、いつものようにカウンターの端の席に座りました。
カウンターの奥では、ご主人が分厚いまな板の前で仕事をしています。
このまな板、10センチ以上の厚さがあるイチョウです。ちょっと感動的。
いかにも職人気質のご主人が絵になってます。
こりゃ高いかも。
「何になさいますか?」と女将。
「生ビール下さい。」
グラスに入った生ビール。
プレミアムモルツです。
適度に冷えていて、のどが鳴ります。
さて、メニューの類が何も出てきません。
「今日は、何がありますか?」
「いろいろありますが、適当に出しましょうか?」
で、でたぁ~っ!おまかせスタイル、お代は時価です。
しかしこうなったらもう腹を気めましょう。
「お願いします。」とキッパリ。
しかし心、いや懐は不安なんですけど・・。
初めのアテは、ジュンサイです。
「あら、じゅんさいですかぁ!」
「季節のものですから。」
ヌルヌルの中のツルンとした食感、そしてジュリっとした歯触りが好きです。
それが小さな器にたっぷり入ってます。
「以前、ここに来られましたか?」
「いやいや、今回が初めてです。」
「以前、お会いしたような感じがしたもんで。」
まぁ、どこにでもある顔ですから・・。
「ここがよくわかりましたね。」
確かに、人目につかない店です。
「いやぁ、調べたら評判がいいもんで、探してやって来ました。」
カウンターの端に金魚鉢が浮かんでいます。
中には赤い金魚。紙で出来た金魚です。
「金魚、かわいいですねぇ。」
「あれ?ツルがからんでいるけど・・・どこから出てる?」
瓢箪みたいな徳利から出て、藤みたいな花の方に行っているの?
このツタも花もご主人が採取してきたものだそうです。
草を眺めながら、しばらくご主人と会話。
お造りが出てきました。
サバと中トロとアラです、って。
「アラですかぁ!」ちょっと驚いてしまいました。
そんなの食べて良いんですかぁ?
九州では「アラ」、本州では「クエ」という高級魚。
「美味しんぼ」でのネタになっている魚です。
姿を見たことはありますが、食べたことはまだありません。
そのアラ(クエ)からいただきます。
透明感のある白身です。
食べると淡白、だけど身に弾力があります。
これがクエかぁ・・。
サバは、身が締まっていてうまい。
中トロの旨さは言うまでもない。
おっと、余りにも簡単な紹介でゴメン、中トロさん。
脂臭さがないです。
近年、マグロの畜養が盛んで、トロの分量が多いマグロが増えています。
要するに肥満マグロが増えたってこと。
エサの臭いが脂肪に移って、脂臭いトロがあります。
養殖ハマチや養殖シマアジが脂臭いのと同じです。
チリ産のトラウトサーモンも臭いよなぁ。
生ビールを2杯飲んだところで、焼酎のお湯割りをいただきました。
徳利に入って出されます。
それを猪口でいただきます。
銘柄は聞いていませんけど、柔らかい味と香りの芋焼酎です。
干しアナゴ。
干すと旨みがぐっと増します。
大根おろしとともにいただきます。
うーん、確かに旨い。
「それは自家製なんです」と言いながら・・
ご主人が、干しアナゴをつくっています。
三枚におろしたアナゴの端を金串に通して、厨房に吊しておくんだそうです。
生利節を煮たもの。
なまり節って、乾燥させているからパサつくでしょう・・。
そう思ったのが私の顔に出たのか?
「なまりは、煮ると普通はパサパサになるんですけど、これはしっとりしています。召し上がってみてください。」とご主人。
いただくと、確かにしっとりしていて、そこにナマリの旨みが出ている。
「へぇ、どうしてこんなにしっとりするんですか?」
「それは企業秘密ですよ。」ですって。(笑)
白子です。
かなり小振りの白子です。
「何の白子ですか?」
イサキの白子ですって。
「あら、忘れてますよ!」と女将。
ごめんなさい、と言って、白子の上に九条ネギを散らしてくれました。
薬味を忘れたぁ! 弘法も筆の誤り、ですね。
ネギの載った白子をいただきます。
プリンとした白子がツルンと口の中へ・・マッタリとした味。
やはり旨い。白子をいただくと、幸せな気分になるんです・・。
ご主人が瓶の中から、何かを取りだしています。
じぃっ!と見ていたら・・
「ご覧になりますか?」と言って器に取り出したものを見せてくれました。
何かの塩辛です。
何かの内臓の塩辛みたい。
食べてみます。
うっ、旨い。酒盗みたいな舌触りです。
「これ何ですか?」
「アラのエラです。」
実はご主人は、その塩辛つくりの作業中。
かなり手間のかかる作業です。
まさにアラのアラの塩辛でした。
酒蒸しです。
「トコブシですね?」
ハマグリの酒蒸し。
身が引き締まっていて、濃厚な味がします。
トコブシの身は柔らかい。
キモのところが、旨い。
酒の肴にいいんだなぁ・・。
お吸い物が出てきました。
鰹出汁が利いたお吸い物、具はジュンサイです。
さっきからチビチビつまんでいたアラの塩辛もなくなってきました。
でも塩辛の汁が皿に残っている。
「これ、舐めたいところですね。」
「ご飯を差し上げましょうか?」
そりゃいい!お願いします。
ご飯を少しいただいて、アラの塩辛の汁を絡めていただきました。
おぅ!うんめぇ~!美味しいです!
野菜の煮物。フキやシイタケなど。
おなかもだいぶん、ふくれてきています。
「最後に甘い物はいかがですか?」
「甘いものですか?いやぁ、苦手なんですよ。」
「ぜんざいですけど、あまり甘くないですから、召し上がってみませんか?」
「そうですかぁ?じゃあ、せっかくなんでいただきます。」
でも、ぜんざい・・・まいったなぁ・・。
大きな金時豆が白蜜に浮かんでいます。
恐る恐る食べてみました。
しっかりした形の金時豆を蜜とともにいただくと、口の中でふわりと砕ける。
そして甘さはとっても控えめ。
うっ、うま。
「これ、美味しいです。」
最後に漬け物。
大根、キュウリ、人参の漬け物。
黒っぽいのは、高菜の古漬けの油炒め。
ご飯がほしくなるんですが、実はもうお腹がいっぱいなんです。
そろそろ締めていただけますか?
とっても美味しいものをいただきました。ありがとうございます。
こんなにいただいてしまって、果たしてお代はいくらなんだろ。
今回は酒代も含めて1人8000円と僅か、でした。
持ち合わせが少ない、という私のつぶやきを聞かれたかな?
料理はとっても満足。お代は実にリーズナブル。
ごちそうさまでした。
ちょっとだけ懐に余裕があったら、ぜひまた伺いたいです。
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