喉越しの良いへぎそばをしっかりいただく 十日町小嶋屋和亭@新潟県十日町市 [ 甲信越]
新潟県十日町市でランチしたときのこと。
新潟県魚沼地方の名物料理をいただきました。
魚沼地方の名物料理というと・・・・コシヒカリ!
これは朝食でいただきました。
もう1つの名物料理は・・・
「へぎそば」です。
とんちゃんのブログを丹念に読まれている読者はお気づきかも。(そんな人いるのか?!)
先日「たれカツ丼」の記事がありました。 http://onhome.blog.so-net.ne.jp/2014-08-13
「たれカツ丼」は、新潟市の名物料理。
そのお店にもう1つ、新潟の名物料理とあったものをご存じの読者がいらっしゃるでしょうか?
「へぎそば」でした。
その「へぎそば」は魚沼地方の名物料理。
これをランチにいただいたんです。
「へぎそば」の名称の由来とかルールについては、最後に触れます。
信濃川の東側、十日町市の旧十日町にあるホームセンターのコメリとハラシン(原信)。
この駐車場の一角に目指すお店があります。
木立に囲まれた落ち着いた雰囲気の建物。
「越後十日町小嶋屋 和亭」さん。
萌葱色と白のツートンカラーの暖簾をくぐって・・・
格子戸をくぐり抜ける。
店内は古民家風の造りになっています。
天井は梁がむき出しの木組みが力強い。
入口脇には待合いスペースもあります。
座敷やテーブル席が中心。
1人用のカウンター席もあります。
温かい、そば茶が出されます。
さて何をオーダーするか?
もちろん「そば」ですけど、せっかくだから「へぎそば」にしましょうよ。
「そば」は1人前からありますけど、本来の「へぎ」に盛られたそばは5人前。
せっかくなので「へぎ」に盛った「へぎそば」をいただきたい。
しかしここにいるのは、とんちゃんを含めて4人。どうする?
4人で5人前を食いきれるだろうか・・・
若い同行者もいるし、きっと大丈夫!と決めつけてオーダーしました。
そばが茹で上がるまでしばらく時間がかかります。
「お待たせいたしました。」の黄色い声とともに「へぎそば」がテーブルに置かれました。
◆へぎそば
大きくて浅い木箱に、そばが1口ずつきれいに並べられている。実に壮観!
この木箱のことを「へぎ」と言い、「へぎ」に並べられているから「へぎそば」なんです。
(正確に言うと、ここの「へぎ」は無垢板ではなく焼き杉を用いていて、蕎麦の下にはスノコが敷かれています。)
そして、こうして、1口づつの蕎麦を波のように並べることを「手振り」といって、これも「へぎそば」の特徴。
灰色をした田舎そばは、表面がツヤツヤしている。
このツヤツヤ感と喉越しの良さこそ、「へぎそば」の製法上の特徴に由来します。
「へぎそば」は、つなぎに小麦粉を使わず、「フノリ」を用います。
そのせいで蕎麦がツヤツヤし、喉越しがいいんです。
数本取っていただくと、ツルリとした食感。腰があって、蕎麦の香りもいい。
このお店のそば粉は、100%国内産、北海道産と長野県産で、それを石臼で挽いているそうです。
挽きぐるみなので蕎麦は灰色をしていますが、少し緑ががかっている。
この緑色は「ふのり」のせい。
ふのり(布海苔)は、本来は紅色をしているのですが、それを銅鍋で煮ると緑色に変色するんです。
薬味の本わさびをつけながら、そばをいただきます。
出汁の効いたそばつゆは、キリッとした味で、蕎麦の旨味を引き立てている。
喉越しがいいので、どんどんいただけるけど・・・かなりの量です。
1人前の量がしっかりあって、かなり頑張らないと4人で5人前を食べられないぞ。
天かすも添えられているので、単調さに飽きたら、天かすで変化をつけるのもいいですね。
しかし最後は若者にお任せしました。
食べ終わって、そば湯を注いで、薬味の葱を散らしていただきます。
蕎麦だけで充分に満足できる味とボリュームでした。
ごちそうさまでした。
小嶋屋の系譜と「へぎそば」の由来について、長くなりますが語ります。
◆小嶋屋の系譜
十日町市の「へぎそば」のルーツは「小嶋屋」さんです。
レジの近くに創業者小林重太郎氏の写真(左)と越後十日町小嶋屋の先代の写真(右)が掲げてあります。
お店の方に小嶋屋さんの系譜をお聞きしました。(小嶋屋総本家HPにも載っています。http://www.kojimaya.co.jp/)
1922年、小林重太郎が旧川西町木島町(現十日町市)に小嶋屋を開店したのが創業。店名は小林の「小」と木島町の「島」からとったもの。
その創業者の店は長男が継ぎ、これが現在の「小嶋屋総本家」。
三男が隣町の旧十日町(現十日町市)に店を開いたのが、ここ「越後十日町小嶋屋」。
また五男が長岡市に出店し現在の越後長岡小嶋屋になっています。
二男と四男はどうしたの?って聞いたら、それぞれ別の仕事をしているそうです。
こうして現在の十日町市内には「小嶋屋総本家」と「越後十日町小島屋」の2つの小嶋屋があります。
両者の味は?となると、好みによって意見が分かれるみたい。
◆「へぎそば」という名称の由来について。
以前、「上越市安塚の石臼挽き蕎麦」の記事でも紹介しましたが、再論します(一部修正)。
http://onhome.blog.so-net.ne.jp/2008-11-20
そもそも「へぎ」とはどういう意味か?
「へぎ」は「へぐ」という動詞に由来します。
その「へぐ」は「はぐ(剥ぐ)」の方言、なんて説明がありますけど、それは大きな誤りです。
「はぐ(剥ぐ)」は、皮をはぐ、仮面をはぐ、布団をはぐとかのように、表面のものを取り去ること。
しかし「へぐ(剥ぐ、折ぐ)」とは、表面を薄く削り取ること。ちゃんとした標準語です。
「へぎ板」(剥木板)という板があります。
これは、丸太を薪割りのように割り裂いて作る板のこと。
木の木口に楔(くさび)をいれ木目に沿って割り裂くのです。
(興味深い記事がありました:「工藤茂喜 「へぎ」というしごと」http://www.sakuranoki.co.jp/interviews/)
のこぎりが出来る以前は、板はそのようにして丸太から「へぐ」ことで作っていました。
のこぎりで板を切り出すと、木の繊維を断ってしまいますが、この技法で作った板は木目が美しく立体的に現れます。
そのへぎ板で作った器が「へぎ」。
元来は神社や神棚に酒や米などの神饌(しんせん)をささげる際に用いた、神事用のお盆です。
今も、結納などを載せる白木の台は「へぎ」と呼ばれています。
「へぎ」は食台としても使われるようになります。懐石料理で酒の肴とする料理を「八寸」といいますが、これは八寸(約25cm)角の杉の片木盆(へぎぼん)に由来します。
現在は「へぎ板」ではなく、切り出した板を使って器がつくりますが、名称にはこうして「へぎ」が残っています。
魚沼地方では蚕を育てる箱を「へぎ」と呼んでいたようで、それにもったから「へぎそば」と呼んだ、という説明があります。
ただし養蚕用具の「へぎ」については詳しくはわからなかったです。
ところで、山形市を中心とする山形県内陸部には「板そば」というのがありますが、これも実は「へぎ」に盛ったもの。
しかしこの蕎麦には「ふのり」が使われていないので、「へぎそば」とは製法が違っています。
◆「へぎそば」の使用
「へぎそば」の名称は、実は小千谷そば商組合が1977年に商標登録してるんです。
当然、十日町市などの「へぎそば」と争いになります。
その後和解が成立し、十日町市と津南町の事業者が2013年に「十日町地域へぎそば組合」を設立し、2014年に「十日町へぎそば」が商標登録されました。
きれいなへぎそばですね。
コシ、風味とも最高ですね!
by コバヤン (2014-09-29 22:37)
> コバヤンさん
見た目も味もいい蕎麦でした。
量もたっぷりで、値段に負けない充実感です。
by とんちゃん (2014-10-02 06:18)