文人が集った名店で名物ばん焼きと焼酎ハイボール ぼるが@新宿 [ 東京飲みある記]
新宿に、ずぅっと以前から入ってみたいけど、なかなか敷居が高かったお店があります。
場所は、小田急ハルクの裏手。
目指すお店は、その異風な外観からすぐにわかります。
蔦のからまる1軒屋。
昔は建物全体が蔦に覆われていましたけど、今は蔦がかなり少なくなっています。
1階外壁はレンガ造りという一見すると古い喫茶店のような外観。
壁には「ボルガ」の店名。
行燈にあるのは「ばん焼 ぼるが」さん。
この外観で、ロシアの母なる河の「ボルガ」なんていう名のお店。
だから、いったいどんなお店なのか、不思議に思ってしまう。
その店名と外観から、長い間、ほんとに喫茶店だと思っていました。
しかも「ばん焼」って、いったい何なんだ?
それは最後にしましょう。
この店はかつては文人が多く集まっていたそうです。
というのも、この店の創業者が俳人だったから。
そして「ぼるが」の店名はロシア文学好きの創業者によるらしい。
その「創業者」についても最後に書きましょう。
お店の入り口脇に焼き台がある。
「愛酒家ぼるが」の看板。いいですね、
とんちゃんはまさに「愛酒家」ですよ。
そして【ばんやき やきとり】とあります。
そう、ここは焼き鳥屋さんなんです。
古い焼き鳥屋ですから、かの吉田類さんも当然に訪れた名店です。
店内は山小屋というか、船底のようなというのが合う雰囲気。
L字カウンターとテーブル席がありますが、そこにお客さんがいっぱい。
あら、こいつは満席で入れないかな?
そう思ったら、店員さんが奥の方へと案内してくれます。
2階席かな・・・と思った、もっとずーっと奥へ誘導されます。
奥はもう1つの建物に繋がっているようです。
1階建ての、そう、昔流にいうとバラックのような建物があるのです。
壁には古いポスターなどが張られています。
レトロ感を出すために、わざわざ古いポスターを張ったのではなく、実際に古くからそこに貼ってあったものでしょう。
とんちゃんが入った時には先客はまばらだったんですが、あっという間にいっぱいになりました。
すごい人気のお店ですね。
みなさん半そで姿ですけど、まだ暑かったときに行ったものなんです。
さて、まずはドリンク。
生ビールしましょうね。
◆生ビール
おや、サントリーのモルツじゃないですか。
昔はなんだったんだろうなぁ・・・とちょっと空想しました。
◆お通し
お通しはキャベツとキュウリの浅漬け。
サッパリしていて、酒の肴にいいですね。
さらにもう1つ、高野豆腐を出汁で炊いたもの。
こんなのが出てくるなんて、さすがのお店です。
料理は何にしようか・・・
メニューは壁に下がった板。
値段が書いていなくて、あれ?いくらなの?と思うと、【一品どれでも\500-です】とある。
500円均一の分かりやすい料金です。
大きな紙にも書いてある。
まぁ、やはりメインの焼き鳥ですよね。
でも面白いのは、普通はレバ、タンとか部位ごとのメニューがあるんだけど、ここにはそれがない。
メニューにあるのは「やき鳥1皿5本」。
2本縛りどころか、5本セットなんです。
つくね、手羽先だけは、単体で2本からオーダーできるようです。
ということで、やき鳥1皿5本を2皿オーダー。
「焼き鳥は塩、タレどちらで。」というので、「塩で、レバーはタレで。」とお願いしました。
◆やき鳥
中身は、豚のレバー、カシラ、タンと鶏の砂肝、皮のようです。
焼き鳥というより、もつ焼きですね。
1人前5本で500円ですから低料金です。しかもなかなかのボリューム。
これはコストパフォーマンスが高いもつ焼きです。
◆煮込み
もつ焼き屋さんなら、テッパンの料理でしょう。
ネギがいっぱい載っている。
モツが柔らかくて、さすがに旨い。
ビールの次の飲み物ですが・・・
焼酎ハイボールとハイサワーがあります。
◆焼酎ハイボール
中に梅干が入っています。
そしてレモンスライスが浮かんでいる。
レモンと梅干って両方も入ってるのは珍しいかも。
さて、ひとくち・・・こ、濃い!(*゚Д゚*)ェ…
この酎ハイの焼酎の量はかなり多いぞ。
このお店は、昔ながらに濃いままのハイボールを提供しているそうです。
こんくらい濃いと嬉しいです。
ところで酎ハイの中の梅干、このままだと味が出てこないよな、と思って、割り箸でつぶしました。
焼酎のお湯割りなんかに入っている梅干も、そうしませんか?
とんちゃんは、見た目が悪いけど、そうしちゃいます。
この後、料理を追加したんですけど、写真に撮っていない。
カメラに残っていたのはこれ。
◆焼酎ハイボール
ホントはハイサワーを飲みたかったんだんです。
でも、この焼酎の濃さだと、ハイサワー1本を飲みきれなくなりそうだったんで・・・。
なんでこれを写真に撮ったかっていうと、2杯目には梅干がなかったからなんです。
1杯目に入っていた梅干は潰して、お替りする前に種は取り出しちゃいました。
そしたら2杯目には、入ってなかったんです。
梅干は1杯目だけのサービスだったんですね。
まぁ、大した失敗ってほどじゃないですけど。
結局もう1杯飲んで、すっかり出来上がってしまいました。(*´▽`*)
ごちそうさまでした。
さて、最後に、このお店のことを紹介します。
この店の創業者高橋茂氏は、俳人でした。
だからかつては俳人、文人が多く集まっていたそうです。
文人ったって、とんちゃんにはわからない名前が多い。
故・寺山修司氏や映画監督・山田洋次氏が芸術談義に花を咲かせた、なんて聞くとへぇ!と感心できます。
の高田純次氏が、この店で劇団員と話し込んだのがきっかけで脱サラして演劇を志したなんて聞くと、スゴ!と思います。
で、創業者とお店の略歴。
1920年、東京・芝神明町生まれの高橋氏は、戦時中の1941年に兵隊として満州へ送られる。
1942年、肺結核を発病し療養、1943年に内地に送還され、終戦まで福島の療養所で生活。
療養中に「ホトトギス」に投稿して入選するなど、俳人として活動。
1946年に、新宿の西口仲通り(現思い出横丁)に「ばん焼ボルガ」を開店。
登記は1949年になっているそうですが、闇市での開業だから、しばらくは無登記で営業していたのでしょう。
1952年に火事で焼失し、2階建ての店舗を新築。
その後、再開発で立ち退き、1958年に現在の場所に移転。今に至っているわけです。
1999年8月、高橋氏逝去。
「ぼるが」という行燈の文字は、その高島茂の自筆です。
参考資料:
結城音彦「酒場『ボルガ』のこと」(長文):http://hukosanbo.exblog.jp/2869764
ねじめ正一「定住の人・高島茂と、漂流の人・高橋鏡太郎」:http://yomimonoweb.jp/nejimesyoichi/p1_1.html
木村草弥、高橋茂の句:http://poetsohya.blog81.fc2.com/blog-category-30.html
店内に創業者ゆかりのものが掲示してありました。
壁に【鯨また廻りきたりし走馬燈】という俳句が掲示されているんです。
へーん、誰の句なんだろう・・・と全く意に介していませんでした。
ところがこの句は、この店の創業者であり、俳人でもあった高島茂氏の句だったんです。
そして右上の【酎ハイ この男が発明した!?】という新聞記事。
1987年6月24日の『夕刊フジ』の記事です。
そして写真の人物は、俳人高橋鏡太郎氏。
とんちゃんは、その人のことを全然知らないから、ふーん!と思って記事を読みませんでした。
まぁ、正確にいうと老眼で字が読めなかったんですけどね。(*´ρ`*)
この人はこの店の常連で、高島茂氏が非常に親しく接し、毎日酒を提供していたということが、ねじめ正一氏の先の記事に書いてありました。
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最後になんで「ばん焼き」なのか。
昔は「ばん」という水鳥を焼いていた、という話がよく来ます。
祐天寺には「ばん」という名のもつ焼き屋さんがあります。
そんな水鳥がいるんか?って思ったら、確かにいるんですね。
「鷭」と書く、鳩くらいの大きさの鳥で、東日本では夏鳥、西日本では留鳥の水鳥。
その野鳥は、鴨よりうまいと言われていました。
昔はその水鳥の鷭を焼いて出していた、というわけです。
しかしこれは、たぶんウソ。
安いもつ焼きと安い焼酎(たぶんカストリ焼酎)を提供する店が、高級な「鷭」を焼いて出すはずがない。
鴨よりうまいという鷭を連想させて、もつ焼きを出したわけ。
だから「鷭」ではなく「ばん」と書いてある。
まるで詐欺、いやいや洒落ですね。
とはいえ、「ぼるが」の店主・高島茂は自宅で軍鶏を飼っていたそうなので、それをお店で出していたかも。
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